第18話 嵐の前の

「おい、からあげ!」


 ケンに髪をつかまれ、うりうりと揺らされる。ヒロイさんとマオが笑う。遠巻きで、オージ、ユーヤ、マリヤさんが次の授業の予習をしていた。


「な〜ケンっ! 問三解けた? 教えてくれよっ」


 ユーヤが大きな声で、ケンに尋ねる。ケンは虚を突かれた顔をした。


「出来てっと思うけど……」

「は〜や〜くっ! 教えてっ」


 ユーヤがばんばんと机を叩きねだる。ケンは、名残惜しげに隼人から離れた。マオとヒロイさんも、隼人をにらみ去っていく。

 隼人は、ほっとして、自分も教科書を取り出した。

 ユーヤは、あれから、あまり隼人に構ってこなくなった。隼人は正直、それにかなり助かっていた。マリヤさんもそれは同じだったようで、何度も「よかった」と言っていた。

 蹴られたのは流石に痛かったからなあ。

 隼人は、ノートを開いて、昨日の予習分の確認をした。


「あれ?」


 何だか違和感があり、ノートをぱらぱらとめくる。そして気づく。何だか、ノートが薄くなっている気がするのだ。確認すると、ノートの後ろに破れた跡があった。


「何でだろう」


 忘れて破ったりしたっけ?

 隼人は首を傾げる。そのとき丁度、チャイムが鳴ったので、その疑問は隼人の中で流れていってしまった。 


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