第13話 甘い笑い声
「ふう」
ひとしきり泣いたら落ち着いてきた。隼人は息をつくと、ハンカチで頬をぬぐった。拭いきれなくて、顔を洗おうと思い立つ。そこで、お腹が盛大に鳴った。
「時間もないし、食べてからにしよ」
鞄を持ってきてよかった。お弁当をいそいそと取り出すと、開ける。いつものおかずが、こんなにもありがたい。
「いただきまーす」
つとめて明るく、両手を合わせた時だった。
「ん?」
どこからか、笑い声が聞こえた気がした。タコさんウインナーを頬張りながら、隼人はきょろきょろと辺りを見回した。すると、裏庭の奥のベンチに、人がいた。寝ているのだろう、ここからは足しか見えない。
そこまで考えて、隼人は「しまったあ」と顔を真っ赤にした。さっきまで頭がいっぱいすぎて、真の無人かの確認を怠っていた。流石に高校二年の男児として恥ずかしく、おろおろと顔をさまよわせる。しかし、今更逃げるのもなんだし、何より時間もない。
ひとまずお弁当を食べようとしたところで、いよいよ大笑いする声が聞こえた。
「あはははっ」
あんまり高らかな笑い声に、隼人も流石にきまりが悪くなった。
「ちょ、ちょっと!」
と、お弁当を片手に立ち上がり、そちらに向かった。そして、ぎょっと目を見開いた。
「龍堂くん!?」
笑い声の主は龍堂だった。思いの外、笑い声が甘くてわからなかったが、そういえば聞いた声だ。龍堂は、仰向けにベンチに寝転んで、隼人を見上げていた。逆さの目に、笑いを残して。
「よう」
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