第6話

 カレンが風呂から出てきて、入れ替わるように私も入る。いつものアパートの風呂とは違って広くて大きい。ちゃんと体を洗えるようなスペースがあるし、隙間風で寒く思うこともない。


「カレンと分かり合うか…」


カレンは私のことをどう思っているのだろう。少なくとも私は『好き』なんだと思う。それは友達としてではなく、1人の男の子としてだ。だから、この気持ちは絶対に伝えないといけないと思う。


「そんなこといきなり言われてもな…」


ぶくぶくぶくと口だけ湯船に沈めて、ちょっと誤魔化す。誰に対してとかそんなんじゃなく、ただ自分で考えてることが恥ずかしくなったからだ。


 再びバスタブの縁に頭をかけて、天井を見上げる。今は何となくそうしておきたい。何となくそうすることで、気持ちが落ち着くから。


 今まずやらないといけないのは、私がカレンのことを知って、カレンに私のことを教えること。


「いつにしよっかな…明日?いや、今日だ。今日じゃないといけない。」


そうじゃないと、明日、明後日、そしてその先になっていく。だから今日じゃないといけないんだ。


 私は湯船から出て、風呂場の外に出て体を拭く。そして紀子さんに貸してもらったスウェットの上下を着た。


「ジャストサイズ。いつも通りのきつさだからすぐ寝れそう。」


髪はヘアゴムがないから下げたまま。化粧水とかは全部借りた。


「上がりました〜!」

「はーい!じゃあ次私入るね。」


入れ違いになるように紀子さんが風呂場に入っていく。そのとき肩を叩かれた。


(分かってますよ。)


私は少し笑って、リビングに入る。そして、ソファーに座っているカレンと向き合った。


「ねぇカレン。ちょっと話あるんやけど。」

「ん?何?」


カレンは持っていたスマホを膝の上に乗せて、私の方を向いた。学校や今までの生活では絶対に見ることができなかった姿で、メガネをかけている。


 その非日常感に少し驚いて、本来の目的を忘れそうになる。けどすぐに戻ってきて、カレンの隣に座った。


「カレンのことが知りたい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る