内見にまつわるヤバい話

護武 倫太郎

内見にまつわるヤバい話

 これは会社の後輩Dから聞かされた、住宅の内見にまつわるヤバい話である。


 Dには高校時代からの親友Sがいた。Dは酒の席で、Sが一軒家を購入したと聞かされたという。


「いやあ、まさかSが家を買うなんてなぁ。俺らまだ32歳だぜ?」

「まあ、僕って昔から物が多かっただろ?」

「Sの部屋、昔から趣味の物で溢れかえっていたもんな。今も独身のくせに物で溢れたんだな?」

「まあね」

「ならさ、内見しただろ?何か面白い家の話とか聞かされなかった?体験談でもいいぞ」

「ああ・・・・・・、内見の面白い話ね?あるよ」

「まじか。・・・・・・で、どんな話よ」

「僕さあ、初めから中古の一軒家を狙ってたんだよ。手出し易い価格の家もあるし。でさ、中古ってことは前に住んでいた人が当然いるわけで、現地でしか分からない空気みたいのがあるんだよ」

「ああ、分かる。人の家ってどこか自分の家とは空気から違うよな」

「だろ?でさ、その家は内見させて貰った瞬間から変な感じがしたんだよ。嫌な気配みたいな・・・・・・」

「え、まさか事故物件だったとか?」

「いや、一緒に来ていた不動産屋さんに確認したけど、全然そんなことなかったよ。前の所有者まだ生きてるっぽいし。でさ、ここはないかなって内心思いながら内見を続けていたら、視線を感じたんだよ・・・・・・」

「おい、それって・・・・・・」

「押し入れにさ、いたんだよ。髪の長い若い女が。パンを食べながら、俺らのことをジーッと見てたんだ・・・・・・」

「めちゃくちゃヤバい話じゃん。で、どうしたんだよ?」

「・・・・・・どうって?」

「いや、警察に通報したとか、慌てて逃げたとかさ・・・・・・」

「ああ、そういうことか。その家に決めたんだよ」

「へ?お前が買ったのってその家?」

「おう、だってその家を買ったら無料ただで女が付いてくるんだぜ。独身の僕にとってはお得すぎる買い物だろ」


 そういってにこやかに笑うSを見て、Dは心底震えたという。

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