第50話 少女のガワをかぶった魔王様①
今日は森の木を切って木材へと加工している。
木の伐採は魔道鎧を使うととても楽にできてしまう。
いままでは何度も斧で叩いて切っていたのだが、魔道鎧の力をつかえば、ホラ簡単。
斧一振りで、もう切り倒せてしまった。
そして丸太もそのまま肩に担いで村まで運べてしまうので、圧倒的に効率がいい。
技術ってすばらしいなと思いました。
しかもこれが量産できるかもしれないのだ。
普及すれば本当に労働が変わるだろう。
当分先にはなるだろうけどね。
そうやってしばらく木を切っていると、フェルが近づいてきて鼻を押し当ててきた。
付いてきて欲しいときにするしぐさだった。
「どうした?なにかみつけた?」」
「バウ!」
どうやら何か見つけたようだ。
しかも声的に早く!と焦ってもいるみたい。
なんだろう?と疑問に思いつつ、駆け足で彼の後に付いていく。
魔道鎧のおかげで長距離もへっちゃらだった。
フェルには乗せてもらえなくなったけど。
重いし、鎧が当たるのがいやらしい。
かなしい。
でもその分夜に一杯もふもふさわっているから、プラマイゼロだ。
しばらく歩くと、大きな木が見えてきた。
そしてフェルがその木の根元にむけて吠える。
「だ、だれじゃ?」
根元から誰かの声が聞こえてきた。
よく見ると、木の根元には、血だらけの少女がいた。
うげえ!
想定外の出来事に思わずうろたえてしまう。
でもひどいケガだ。
放置なんてしてられない、急いで少女の元に駆け寄る。
「離れろ!この不届き者め!」
助けようと手を伸ばすが振り払われてしまった。
どうやらかなり警戒しているようだ。
フェルも助けようとして振り払われてしまったらしい。
だから僕を呼んだのか。
でも、どうしよう。
僕でもこれは無理そうだぞ?
あのケガだ。
下手に抵抗させてしまえばさらに傷がひどくなる。
でものんびり待っている余裕なんてさらにない。
説得するしかない、と思いいたり、再び覚悟を決めて少女へと近づいていく。
今度は両手を上げて、ゆっくりと。
こちらに敵意がないことを示しながら、距離を詰めていく。
「敵じゃない。ただ君を助けたいだけだ」
「ウソじゃ!そうやってわらわを騙す気じゃな!あやつらのように!」
そう叫ぶと少女は気を失った。
今しかないと思い、急いで少女を抱え、村へと帰る。
村についたら、スラに治療をしてもらった。
外傷はなくなった。
後は失った血を取り戻させるだけだ。
これはどうにもならないので、目覚めたらしっかり食事をとってもらおう。
少女を病床に寝かせる。
助かったのはよかった。
だが、この子はどこの子なのだろうか?
「わらわを騙す気じゃな!あやつらのように!」
とも言っていた。
おそらくだが、訳ありの可能性が高い。
まあどんな訳があろうとも、助けない理由にはならないからいいんだけど。
早く元気になってくれれば、それだけでいいさ。
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