第49話 図書館

 「図書館、ですか?」



「そう、やっぱり勉強を教えるためにはあったほうがいいと思うの」



それは珍しいサラさんからの提案であった。

提案の内容は村に図書館を作りたいとのことだ。



最近、サラさんはラナちゃん以外の子にも魔法を教えるようになってきているのだが、それがあまりうまくいっていないらしいのだ。



サラさん曰く、魔法はたくさんの知識の積み重ねでありこれ一つやっていればできるというものではないとのこと。



だからたくさんの知識や経験をつませてあげる必要がある。



ラナちゃんの場合は、一体一の教育だったし、彼女自身に才能もあったため上手くいったが、あくまでそれは特殊な事例であり、再現性はない。



村で安定的に魔法使いを育てるためにも、どうしてもたくさんの書物をもった図書館は必須、と力説されてしまった。



確かにサラさんの言うとおりだと思う。



こちらの世界では本というものはとても高価だ。

前世のようにふらっと本屋に立ち寄って買うことなど到底出来ない。



いちいち手で書き写して増やしているらしいからね。

そりゃあ値段も高くなって当然だ。



だからこそ、1人1人が本を持つのでは無く、村の財産、みんなのものとして本を手に入れると発想はとてもいい考えだ。



学校がないこの村で、図書館で本を読むというのはいい学習機会にもなってくれそうだし、良いことずくめだ。



さっそくサラさんの提案を受け入れ、図書館作りをはじめた。



とはいっても建物自体を作るのは簡単だ。

あっという間にできあがってしまう。



しかし問題は本のほうだ。

本がない図書館など、ありえない。



本屋なのに本ねえじゃん!などとなっては本末転倒もいいところだ。



今まで貯めてきていたお金を使って、一気に本を買いあさっていくことにしよう。



できるだけジャンルは問わず幅広くがいいかな。



そんな事を考えながら町に行き、片っ端から本を買い集めていく。



お金は湯水のように消えていった。



ああ!少しかなしい!

せっかく貯めたのに!



でも落ち着け。



お金は持っているだけでは意味がないのだ。

それにこれは浪費じゃない。



将来への投資なんだからいいんだ。



・・・マジで本の扱いは慎重になろうと思った。



前世でゴハン食べながら読んで、汚してしまってごめんなさい。

今、ここで罪を告白し、謝罪します。



そして今日から、自分の子のように大切に扱いますのでお許してください。



と、茶番を挟みつつ、無事に図書館は完成してくれた。

うん。なかなかいいんじゃないかな?



村の人達もなんだなんだと興味をもってくれている。



たくさん本を読む人が増えるといいな。



そしていつか自分も書きたい!という人もでてきて、文豪もあらわれるかも?



考えるだけで楽しそうだ。

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