第40話 ゴブリンキング②

それは攻撃の命令をだしてすぐのことだった。



突然、大地が揺れ始める。



「何事だ!?」



予想していない出来事に、思わず

俺は動揺する。



部下達も戸惑っているようだった。



そしてそんな俺達の前に、

そいつは姿を現した。



突如、地面がぱっくりと割れる。



「ギャギャギャ!」



多くの仲間達が悲鳴を上げながら、

割れた地面に飲み込まれていく。



そしてその割れた地面からにゅ!と巨大な

ミミズのような生き物が姿を現してきた。



ワームドラゴン。



地中に潜む、伝説の巨大モンスターだ。



な、なぜあんなものが目の前にいる!



俺は思わずうろたえた。

ここはこんなバケモノが生息する

危険地帯だったのかと、驚く!



そしてすぐにその考えが勘違いであるともわかった。



ワームドラゴンの出現が合図であったかのように、

突然空が明るくなる。



魔法だ。炎の魔法だ。



炎の魔法はワームドラゴンへ反撃

しようとしたゴブリンシャーマン達を的確に

焼いていく。



ぐ、偶然ではない!



こ、これは、計られたのだ!



混乱する頭がそう結論を出した。



統率が乱れた部下達に、さらに攻撃が襲いかかる。



前にも見た狼に、スライムと、動く大樹達が

責めてくる。



しかもそれだけではない。

今回は追加のスライムにゴーレムと、あのワームまでいるではないか。



あれだけ期待していたゴブリンウォーリアとオーガは

すぐに食いちぎられ、溶かされ、叩き潰されてしまった。



な、なんなのだ。

なんなのだこれは!



い、いかん、冷静になれ。



まだだ、まだ別働隊がいる。



彼らが数人でも村人を

さらってくれていれば負けではない。



そのためにもこちらに注意を引きつけなければ。



焦る部下達に、弓矢の発射を指示する。

先端に毒を塗った毒矢だ。



当たれば無傷ではすむまい。

そして大量の矢を回避もできまい。



矢達が一斉に発射され、空を覆いつくし

落下していく。



これで死ね、と心の中で唱える。



だがその期待の矢達が敵を殺すことはなかった。

突然強風が吹き、毒矢がすべてはじかれてしまったのだ。



馬鹿な!



まさか、まさか魔法か!



魔法使いまでいるのか、あの村は!

ありない。こんな結果はありえない!



短い時間であれだけの軍備をそろえたというのか!



思わず地団駄を踏んだ。

だが最悪は続く。



部下から別働隊の壊滅が伝わってきた。



村に侵入したはいいものの、猫人族の

戦士にすべてやられてしまったらしい。




ぜ、全滅!

数分もたたずにか。



て、撤退だ。



俺は、俺達は手を出してはいけないモノに

手を出してしまった。



逃げなければ。

俺は武器を捨て、

自分だけでも生き残ろうとした。



だが、もう遅かった。



ぎゃ!と再び部下の悲鳴が聞こえる。



振り向くとそこには狼がいた。

同胞の血で赤く染まった毛を逆立てて、

うなりながらこちらに近づいてくる。



な、なんでこの場所がばれたのだ!

臭いは消しているというのに!



くるな!

くるなあああああ!



狼の大きく開いた口が迫り来る。

それが俺が見た記憶であった。

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