第18話 混浴エルフといい匂い

お風呂に到着して最初に思ったことは、

湯船が綺麗だということだった。



みんなが入った後なのにだ。



体を洗ってから入るとはいえ、

多少汚れていることを覚悟していたのだが、

一番風呂と大差ないきれいさだ。



どうやら誰かが入るたびにサラさんが

魔法で湯を新しくしていてくれているらしい。



うれしいけれど大変ではないのかと聞いたら、

魔力が無限に入ってくるから全然平気とのことだった。



まあ、それならいいか。

ありがたく、使わせてもらう。



体を洗って、お風呂に入る。


暖かい湯が体にしみわたっていく。



思わず、ああ、という声が漏れてしまった。



そうだ。これだよ。

前世の生活で体にしみついた、

入浴という文化。



水浴びも悪くはないけれど、

どうしても冷たい水相手だと休んだ

という気がしない。



やっぱりお風呂はこうでなくては

とこころから思った。



外の景色をみながら

のんびりと湯につかる。



そうしていると、誰かが近づいてくる

音がした。



音の方を振り向くと、



「や、やあ。い、いっしよに、いい、かな?」



サラさんだった。

顔を赤らめながら、

なぜかお風呂に入ってくる。



そして一悶着あった上で、

結局一緒にはいるはめになった。



500年生きた先輩を子ども扱いするな!

とサラさんはいきまいていたが、

一番恥ずかしがっているのはサラさん本人

であった。



どうしてこうなるのだろう。

休まるはずのお風呂が、

何だが落ち着かなかった。



でも、悪くもなかった。



お風呂から出たら、今度はフェルをお風呂に

いれてあげた。



フェルだけがお風呂に興味をもっていたからだ。

石けんで体を洗い、お風呂にいえてやると、

トロンとしながら気持ち良さそうに浸かっていた。


気持ちいいかい?と聞くとフェルは


「ば~う」


と気の抜けた返事をしてくる。



ふふふ。



何だよそのとろけた返事は。

こっちまで気が抜けてしまうじゃないか。



町までの長い道のりを走ってくれたのだ。

ゆっくり休んでほしいと思った。



夜、みんなで一緒に寝ていると、

石けんのいい匂いが漂ってきた。



体もいい感じに疲れが取れと、

心地よい睡魔が襲ってくる。



ラナちゃんもサラさんもフェルも同じなのか、

彼らはもうスースと気持ちよさそうな寝息を

立てて、眠っている。



他の子達にも、お風呂のようななにか

リラックスできるものがあったらなと思った。



みんなでゆっくりして、安らかに眠る。

なんの変哲もないことだけど、それが

どうしようもなく心地がいい。



そんな事を考えながら眠りについた。

とても良い一日だったと思う。

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