第3話 スライム召喚!

「ありがとう旅人さん!」



ラナと名乗ったその子は僕とフェルに

元気よくお礼を言ってくれた。



僕たちを警戒する素振りはない。

接触の仕方としては満点ではないだろうか。



それに、旅人さん、か。

確かに何もしらない彼女の目には

僕たちはそう写るのか。



ラナちゃんは猫耳をピコピコとさせながら

僕とフェルは興味深そうに見つめていた。



「ケガはない?」



「うん!少しすりむいたけど、

こんなの薬草をつければへっちゃらだよ!」



ラナちゃんはそう言うと自分の持っていたカゴに目を向ける。

しかしカゴとその中に入っていた薬草たちは、

彼女が転んだ弾みで泥にまみれてしまっていた。



「ああ!!そんな!!せっかく頑張って取ってきたのに!」



事実に気づくとラナちゃんは悲しげな声をだした。

そして先ほどまで元気に動いていた耳もしょんぼりと

たれてしまう。



うん。感情がすごくわかりやすい。



そしてこのままにしておくのはかわいそうだ。

ケガも、軽いとはいえ痛そうだし。



こんな時には召喚術だ、っと、

再び本を呼び出し、ページをめくる。



お!スライムか。



ふむふむ。



回復スライム。

そんな子がいるのか。



ちょうどいい。

今の状況にぴったりだ。



ページを開いて、

来い!と念じる。



うわ!


僕の頭の上に出てきた!

薄い水色で、ぶよぶよとしてる。



ちょっと。



くすぐったい、

くすぐったいって。



僕じゃないから。

目の前の女の子だから。



そう念じるとスライムは理解してくれたのか

のっそりとラナちゃんの方へ移動していく。



「ヒ!な、なに!」



「大丈夫だよ、君のケガを治そうと

してくれるんだ。ジッとしててね」



「わ、わかった」



スライムはそのまま彼女の膝小僧に

張り付くと、ケガを治療し始める。



そしてあっというまに彼女のケガを

治してしまった。



「え!?ウソ!?もう痛くない!?

すごい!すごいすごい!」



ラナちゃんはスライムのすごさを理解してくれ、

スライムを両手で掴むと、うれしそうにブンブンと

振った。



ああ、やめてあげて。

たぶん嫌がってるから。



うれしいし、興奮しているのはわかるけど。

ああ、助けてって頭の中に直接訴えてきてる。



なるほど。



こうやって言語を通さずに、

意思疎通ができるのか。



すごいな、召喚術。

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