3分以内にやらなきゃいけないこと
高久高久
第1話
――俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
目の前に置かれた四角いデジタル式のタイマーが残り時間三分から一秒、また一秒と時間を減らしていっている。このタイマーがゼロになり、音が鳴った時俺は死ぬ。
何を馬鹿な。そんな事あるか。大体の奴はそう思うだろうが、現実だ。残り時間二分五十秒。
現に俺もそう思ってはいたが、隣の部屋の奴はそれで死んだ。タイマーの音と共に、変な虫みたいな化け物に襲われて。
この部屋に置かれていたメモによると、その化け物はタイマーの音に反応して目を覚まし、近くにいる生き物を襲うらしい。この部屋の場合、生き物は俺しかいない。つまり目を覚ましたら俺が殺される、ってわけだ。残り時間二分四十秒。
何で俺がこの部屋に居るか。ネットで高額のバイトだって騙されたからだ。仕事の内容も良く見ず、報酬だけに飛びついた結果がこれだ。指定された場所に行って、仕事前にと渡されたドリンクを飲んで、気が付いたらこのザマ。目が覚めたら四角いコンクリの部屋に虫みたいな化け物と、俺の他に集められた奴らの部屋が映されたモニターがあったわけだ。残り時間二分三十秒。
タイマーのスタートは部屋ごとに違うらしく、俺はつい三十秒前にタイマーの音が鳴って始まった。化け物はけたたましくタイマーの音が鳴らなけりゃ起きないみたいで、開始音には反応しなかった。
やらなきゃならない事、ってのはこの部屋から出る事だ。襲われた奴の映像を観たが悍ましい事この上ない。生きたまま食われるみたいだが、その食われ方ってのが悲惨だ。口から針みたいなものを刺して――ああ、思い出したくもない。このままだと俺も同じ目に遭う。残り時間二分二十秒。
部屋の扉は時間と共に開く、とメモにあったが、どう足掻いても先にタイマーの方が鳴る仕組みになっているようだ。クソッタレ。生かす気ゼロじゃねぇか。
扉をガンガン蹴っ飛ばしたり、他に出口が無いか探したり、そんな事をしている内に残り時間はどんどん減っていく。さっきまで二分あったと思ったらあっという間にもう一分を切っている。ああもう五十秒前だ。
残り時間で祈れってか? それとも罪でも告白しろってか? いや俺が何をした? そんな事を考えている内にもう三十秒前だ。
このクソッタレのタイマーをどうにかしろって言うのか? ぶっ壊してやろうかと思い、タイマーを手に取る。
――後ろに、時計のマークのスイッチがあった。
そんな馬鹿な、と思いながら押してみた。
残り時間三秒。タイマーが止まった。
――そうだよな。やらなきゃいけないよな。タイマーを止めるの。
3分以内にやらなきゃいけないこと 高久高久 @takaku13
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