第三話 マイン君強化計画始動
「普通に生きていけたら十分なんだけどなぁ……」
鬱展開とかいらないんで。普通に楽しく生きていけたら満足なんで。あ、でもチョビ髭とカインに嫌がらせくらいはしたいかな。あと騎士とか使用人とかも。まぁ要はこの家のやつ全員だな。
その為にも原作マイン君ルートを回避しないとな。といっても幽閉されている状況でできることってあんまりないんだよなぁ。この離れから自力で脱出するにしろ解放を待つにしろ、生存率を上げるためには戦う術を得るしかない。
「やっぱ魔法しかないよなぁ」
設定では素のマイン君もなかなかの魔法適性があったはずなので、ここからは俺の努力次第。幸い、ざっくりとではあるが原作の知識があるので、いろいろと試していくことにする。
現在、マイン君は七歳。成人までは五年ほどある。この五年で最低限一人で生きていけるだけの力はつけておきたい。
あ、そうそう、この世界には異世界モノ定番のステータスやメニューといったものは存在しないようだ。一応声に出してみたけどダメだった。まぁ、何でもかんでもゲームのときのようにはいかないか。ちょっと楽しみにしてたんだけどな。
「よし、方針は決まった。明日から頑張ろう」
もう真っ暗だからね、しょうがないね。
……そういえば誰も夕飯持って来なかったな。死ね。
『おい、出てこい無能!』
「っせーな、死ねよ」
朝から罵声と扉を叩く音で起こされて思わず悪態をつく。まぁ、外には聞こえないだろ。
「……あー、やっぱ夢じゃなかったかー」
朝起きたら自分の部屋だったりしないかなーなんて期待しながら眠りについたけど、まぁそうですよね。
『おい!聞いてんのか、無能っ!』
「あー、はいはい」
そんな事を考えている間に、外の声がどんどんヒートアップしてきたので出ていく。するとドアの下部にある小窓からパンとスープが載ったトレイが差し入れられた。
『これが一日分だ、侯爵様に感謝することだな』
「……うっす、ありがとうございます」
『次からはもっと早く出てこい、こっちだって暇じゃねーんだ』
外でブチブチ言っているのを適当に聞き流して食事を運ぶ。トレイの上には大きめな器に入ったほとんど具がないスープと固そうなパンが四つ。
「え?食事これだけ?侯爵家せっこ」
とはいえ、これがなければ飢え死に確定なのでありがたくいただこう。
「うわ、味うっす」
「パンかった」
「侯爵家せっこ」
夕食用に半分ほど残して魔法の鍛錬を始める。といってもまずは体内の魔力を感じるところから。床に座って自分の体内に意識を向けていく。設定では心臓の近くに魔力を生み出す器官があったはずなので、その辺りを重点的に。
「おっ、これかな?」
割と簡単にそれらしきものが見つかった。まぁ、ここまではマイン君も出来てたから当然か。とはいえ、前世ではファンタジーでしか存在しなかった魔法の発動に一歩近づけたことで気持ちが弾む。
さて、ここからは原作知識の出番だ。この世界では魔法使いの技量を伸ばすうえで重視すべきものが三つある、らしい。原作で学園の先生が言ってた。
まずは魔力量。魔力量が多ければ多いほど使える魔法の規模や回数、効果時間が伸びる。魔力量は魔力が回復するときに周囲の魔力が身体に取り込まれることで少しずつ増えていく。要するに魔法を使えば使うほど伸びていくってことだな。
次に魔力操作。その名の通り身体の内外の魔力を動かす技術のことで、これをスムーズに行うことでより速く、より正確に、より少ない魔力で魔法を発動することができる。さらに魔力操作を極めると大気中の魔力を使って無限に魔法を発動することができると言われている。ゲームでは『賢者』だけが到達できたといわれる領域だ。
さすがにそこまでは無理にしても、魔力を扱う上で欠かせない技術なので伸ばせるだけ伸ばしておきたい。
最後にイメージ。属性や魔力量などの縛りはあるが、イメージ次第でいくらでも新しい魔法を創造することができる。さらに発動する魔法のより具体的なイメージを持つことで魔法の威力や精度が上がる。この辺は原作知識を含めた前世の知識で多少はカバーできそうだな。まぁ、俺が覚えてるレベルの知識だとちょっとしたアドバンテージにしかなりそうにないけどな。こんなことならちゃんと勉強しとけばよかった。いまさら言ってもしょうがないけどさ。
ちなみにマイン君が使えるのは地属性魔法と爆発魔法。なかなかにレアな複数属性持ちだ。しかも爆発魔法は特殊属性だからさらにレア。ゲームでは街道の地中に爆発魔法を設置して、行軍中のアーライト侯爵軍を『剣聖』諸共爆殺していた。うーん、まさに
まぁ、どんな魔法を使っていくかは追々考えていけばいいだろう。この離れの中じゃ下手に属性魔法を使うわけにもいかないしな。
あとはこの世界の知識を増やさないと。書斎らしき部屋があったから毎日ちょっとずつ読んでいこう。
「つーことで、マイン君強化計画始動しますか!」
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