第4話 イメージ(4、温室)
台所で旭が夕飯を作っていると、ふよふよと生首の豊ノ介がやって来た。
「へえ。旭、飯なんて作れるのかい?」
「まあ、難しくなければ」
旭が作っているのは、二人分のオムライスと野菜のコンソメスープ。今夜、叔父の弥命は帰らないが、明日の朝食用だ。
「帰らない人間の分なぞ、作らなくても良いのに」
「一人分も二人分も変わらないんですよ」
口をややへの字に曲げる豊ノ介に、旭は困ったような笑みを返す。料理はもちろん、片付けも手際良くこなす旭をしばらくじっと見つめていた豊ノ介は、ぽつりと呟いた。
「旭はぽやっとしてるし、温室育ちの坊っちゃんかと思ったが……中々どうして、やるじゃないか」
「僕、そんなイメージだったんですか?」
意外そうに目を丸くする旭に、豊ノ介はからからと笑う。
「ますます気に入った。面白いねェ、旭は。こんな姿でなけりゃ、旭の作った飯を食ってみたかったよ」
ぐりんと一回転しながら、旭の肩に下りて来て顎を乗せる。確かな重みがあるが、冷たいそれに戸惑いつつ、旭は尋ねる。
「食べられないんですか?」
「食べられないねェ。残念だよ」
大仰に溜息をつく生首を肩に乗せながら、旭はそれ以上何も言えず、作業を続けたのだった。
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