第6話 呪い生物の力。
城の図書館でルタから字を教えてもらっていると、ガトに声を掛けられる。
『主、周囲に魔物が現れた』
「魔物?」
図書館の窓際に置かれたテーブルの席に座ったルタの膝の上に座り、字を教えてもらっていた俺は、ガトの言葉に顔を上げて図書館の中を見回す。
が、何も見当たらいので首を傾げ。
「見当たらないけど?」
『部屋の外』
俺は横にある窓から外を眺めると既に日は沈み、外が真っ暗になっていた。
しかし、2階にある図書館の窓から下を見ると城の周辺を、骸骨が歩いているのを発見。
「アンデッド?」
「そのようです。いかがいたしますか?」
とルタの問いに俺は、少し考えて実験をする事に。
実験とは、魔物を倒したらレベルが上がるのか、アンデッドという魔物に呪属性は効くのかという実験だ。
本を探すために城の中を探索してる時、使われていない少し黄色い植物繊維から作られた、紙の束を発見したのでそれを使って文字の勉強をしている。
勿論羽ペンを使ってだ。
この紙を呪術に使えるのかという実験も兼ねて、さっそく新しい紙を小さく切ると呪物にするため、イメージしながら魔力を込め文字を書いていく。
呪いとは、なにも悪いモノばかりじゃない。
それこそ怪我を治す呪いもあれば、地球や他の世界にもあった、浄化の呪いもある。
結界を張ったりする事も出来るよ。
今回は実験なのでそれらはせず。
攻撃的なイメージをして文字を書いた。
文字は『火』『風』『土』『雷』『氷』『光』の6種類を数枚用意する。
これが出来れば、夢にみた魔法が実現可能だ。
『光』だけは浄化と明るさをイメージしたぞ。
そんな中、書いてる途中でふと気付く。
真っ暗なのに自分の周りや手元が良く見える事に。
しかし、これも種族特性かとすぐ考えるのを止め書く事に集中し、出来上がったので先ずは、別の実験から始める。
「ガト、先ずはお前がアンデッドを倒してくれ」
『了解』
そう言うとガトは、ドスドス歩いて行くので後を付いて行き、ガトが図書室の扉を開けると廊下には、大量の鎧を着て剣を持ったスケルトンがウロウロしていた。
扉を開けた事でスケルトン達は、ガトを見て一瞬動きを止めるとガトに向かって走り出す。
出た所に居たスケルトンは、剣を振り上げガトに斬り掛かるが次の瞬間、スケルトンは後方へ弾けるように、バラバラになりながら吹っ飛ぶ。
なんだ今のは?
ガトが何をしたのか分からない。
まったく動かずスケルトンを吹っ飛ばしたけど、魔法か何かを使ったのか?
やっぱり俺より強いじゃん。
そんな事を考えていると続々とスケルトンが迫って来る中ガトは、廊下に居る大量のスケルトンに向かってドスドスと歩いて行く。
するとガトから約2メートル範囲に入るとスケルトンは、先程と同じようにバラバラに弾かれ、窓を割り壁に骨が当たって更に粉々になる。
あれは……衝撃波か何かを出してるのか?
ただ歩いてるだけで衝撃波を出すとか、化け物だなぁ。
いや、俺が作ったんだけどさ。
あんな事が出来るとは思わないし。
ってか、ガトが居れば戦う必要無いじゃん。
全部ガトが倒してくれそうだな。
しかし、現実はそう甘くはない。
スケルトンを弾きながら歩いて行くガトの前に、一回り大きな身体と少し豪華な鎧を着て盾と剣を持ったスケルトンが姿を現す。
気配からして他のスケルトンより強そう。
するとそのスケルトン、スケルトンナイトと呼ぼう。
スケルトンナイトが盾を構えながらドスドスと走り出し、ガトに迫るとドンッ! と鈍い音を響かせ、スケルトンナイトの動きが止まる。
だがスケルトンナイトは吹っ飛ぶ事無く耐え、剣を振り下ろしてきた。
ガトは咄嗟に身体を逸らし避けると左手を突き出しドンッ! と触れていないのにスケルトンナイトを微かに後方へ下げるが効いていない様子。
衝撃波? が盾によって防がれるのでガトとの相性が悪い。
やっぱりあの攻撃は衝撃波を出してるのかな?
ってそれより……。
「ルタ、あのスケルトンナイト、倒せる?」
「はい、お任せ下さい」
「よろしく」
俺の背後に立っていたルタがスッと前に出ると、戦っているガトの近くまで行き声を掛ける。
「ガトさん、そいつはお任せを」
『頼んだ』
そう言うとガトは後方に跳び、ルタより下がると構えを解く。
次の瞬間、スケルトンナイトの盾が格子状に切断され、バラバラになると続いてスケルトンナイトが、細切れにされてバラバラになって終了。
……何今の!?
ルタもまったく動いてないんだけど!?
何をした?
状態を見れば斬ったように見えるけど、ルタは刃物なんて持ってないぞ?
まさか、爪が滅茶苦茶斬れるとか?
いや、動いてないからそれは無いか。
じゃあ……ルタも魔法かな?
斬るって事は風魔法?
呪い生物って魔法が使えるんだなぁ。
そんな事を考えていると残りのスケルトンを2人が数分で始末し、静かになると2人が俺の所へ戻って来たので、攻撃方法を聞いてみるとルタが。
「あれは『呪い』です」
「呪い? 呪いで斬ったのか?」
「はい」
「ガトも?」
頷くガト。
呪いで斬ったり弾いたの?
まさか魔法じゃないとは……呪いか。
「厳密に言えば『呪術』です」
「……謎が深まった」
あれが呪術?
なら俺にも出来るのかな?
……出来る気がしないのはなぜ?
腕を組んで考え込んでいると俺の横を、細い光の線が一瞬走ると廊下の先から『あぁああああ……』と、呻き声が聞こえて静かになる。
ゴースト系の魔物が居たようだが誰がと思い、横を見るとアルが浮いていた。
「今のは……」
アルがやったのは分かるが今のを見て一瞬、頭に映像が浮かんだ。
どれくらい前の前世だったか思い出せないが今の光の線は以前受けた事がある。
奴隷だった時、冒険者が使った魔法を肉壁として受けた。
あれ? ちょっと待てよ?
……ガトが使ってた衝撃波ってまさか。
前世で受けた攻撃に似てる?
あっ、ルタがやった斬撃も……以前俺が受けた事がある攻撃だ。
その時は腕を斬られただけだったけど、いつの間にか斬られてたんだよな。
アル、ルタ、ガトがやった攻撃は全て、俺が受けた事がある攻撃……3人は俺が作った、俺の『呪属性魔法』で生まれた呪い生物。
つまり、俺が受けた事がある攻撃を、呪い生物に能力として与える事が出来る……って事かな?
って事は、俺も使えるんじゃね?
……うん、魔力が足らないか。
呪属性って何でも有なのかな?
衝撃波に斬撃ときて光線だぞ?
魔力が増えたら試そう。
「呪いねぇ……あっ」
俺はもう1つの実験の結果を確かめるため、ステータスを開く。
名前;シャルド
種族:呪人
年齢:0
職業:呪術士_LvMAX・転職可能!
職歴:【見習い呪術士】
ユニークスキル:【呪属性魔法】
スキル:呪術_Lv9
解呪_Lv5
耐性::【呪い吸収】
称号:【神呪を克服した者】
「よし!」
実験は、俺が作り出した呪い生物が魔物を倒して、俺にも経験値が入るのかとい実験だ。
結果は、ガト達が倒せば俺もレベルが上がる!
これなら0歳児でもレベルを上げられるぞ!
もっと呪い生物増やそうかな?
そうすれば、俺が何もしなくてもレベルが上がるし……いや、訓練はしないと強くはなれないか。
でも、レベル上げは捗るね。
スキルレベルは自分でやらないと上がらないけど。
街に行けるようになるまでどれくらい掛かるのやら。
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