第4話 種族特性?

数年前、村を他国の兵士に襲われ家族は殺され、姉は目の前で犯され殺された男。

その後兵士達は、自国の兵士に討伐されたが、他国の人間に憎しみを抱き、同じ目に遭った男達と村を出て流れ着いた他国で男達は、盗賊となり村を襲い続けた。


あの時の恨みを晴らすために。


街道を行く旅人や商人を仲間と襲い、食料や金品を頂く。

たまに女を連れて行き、楽しんだ後捨てるという、そんな暮らしを続けていた。


最初は復讐だったがいつしか欲しい物を力づくで奪い、寝たい時に寝て起きたい時に起きる。

盗賊という底辺の生活が自分には向いていると男達は思い、村を出てからずっとそうして生きて来た。


そんな中、原因は分からないが人が居なくなり、誰も寄り付かないゴーストタウンの噂を耳にし、仲間を引き連れその街の屋敷を活動拠点にして周囲の村を襲い始める。

するといつしか周囲に襲う村や集落が無くなり、そろそろ拠点をまた移動するかと考えていた男は、化け物と出会ってしまう。


見た目はただの子供だが、その化け物が発している禍々しい気配。

男の仲間はその気配によって頭がイカレ、男もまた心の奥底から込み上げる恐怖や不安と戦いながら化け物と対峙する。


しかし化け物は、自分はただの0歳児だと言うが男は『そんな訳あるか!』と叫びたい気持ちを口には出来ず、ただ正気を保つので精一杯の状態だ。


更に、化け物が近づいて来る度に身体の震え、寒気、恐怖、不安がより大きくなる。

男もこれまでいろんな魔物を見て来たが、こんな化け物は見た事も聞いた事も無いと思いながらどうにか生き残る方法を考えていた。


シャルドから発せられる禍々しい気配、この原因に気付く者はそうそう居ないだろう。


シャルドはこれまで、何度も転生して地獄と呼べるような人生を生きて来た、その過程で経験した痛み、憎しみ、恨み、怒り、苦しみ、恐怖、不安、ありとあらゆる負のエネルギーがシャルドの魂に蓄積され塊となったモノ。

いわば『シャルドの呪い』である。


何度も転生して蓄積された呪いは、とうとう神の呪いを飲み込み今世に到る。

種族特性と思っているシャルドだがこれは、シャルドの魂から滲み出している呪いだ。

その影響で種族が『呪人』となったがその真実をシャルド本人が知るのは、まだもう少し先の事。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なるほど、これは特性か」


つまり、自然と周囲に俺の身体から呪いっぽい何かが出てる……ってせっかく神の呪いが無くなったのに、これじゃ人と会えないんじゃね? 街に行けなくね?

マジか……。


何だよ呪人って、なんでそんな種族になるんだよ。

……これも神の呪いのせいだな。

絶対いつか殺してやる。


待てよ? 引っ込められるかも?

こんな状態じゃ誰とも会えないからね。

試してみるか。

まずはもっと強く出来るかな?

自分を解放するように……ん?


目を瞑って試した瞬間、ドサッと倒れる音がして目を開くと、金髪の男が泡を吹いて倒れていた。


「……成功したのかな?」


って事は、発してるのを引っ込める事も出来るはず……うん、全員気絶してるから出来てるのか分からないな。

起きるまで待つか?

……そうだ。


「アル、俺から何か出てる?」


試しに出てる何かを引っ込めてアルに聞くと、横に球体を振る。

どうやら引っ込められたようだ。

これなら……ん?

アルが今度は頷いてる。

もしかして集中してないとすぐ出ちゃう系?

これはキツイな。

もう一度……お、止まったようだな。

……この状態を維持しないといけないのは厳しい。

でもやらないと街に入れないし、訓練しないと。



そんな事を思いながら階段下に落ちた男達の方へ行き、様子を確認する。


「何じゃこりゃ?」


男達は目が窪み、やせこけ髪が抜け落ち、明らかに不健康な様子。

これも俺の特性のせいか?

このままじゃ話を聞く前に死んでしまいそうだなぁ……あっ。


俺は呪属性魔法でどうにか出来ないか考え、1つの考えに到る。

こいつらを呪いに変えれば死なないのでは?

人としては死ぬかもしれないけど、呪いとしてなら生きられるはず……たぶん。


「……どうやればいいんだろ?」


アルの時は呪いを集めて作ったけど、人間を変えるのは……呪いを浴びせれば良いのか?

呪属性魔法を意識してありとあらゆる呪いを男達に……浴びせる!


するとその瞬間、男達の身体が盛り上がり始め、紫や緑色の肉塊のように膨らんでいき、徐々に混ざると1つの大きな赤い肉塊になった。


これは成功?

いや、ただ肉塊になっただけだし、成功とは言わないか。

なぜ1つになった?

まあ、俺が数が多いから1つになればスッキリするのになぁとか考えてたけど、その影響?


それにしても、回復の呪いをしようとした時は魔力が足らなかったのに、普通に呪いを浴びせようとしたら感覚だが殆ど魔力が減ってない。


これは、負の呪いに特化してるユニークスキルっぽいぞ。

と、それよりこの肉塊をどうするか……アルのように呪い生物に出来るか試すと肉塊は、徐々に人型になり身長2メートル程の筋骨隆々な生物に変化を遂げる。


目鼻口耳は無く、髪も無いただの筋骨隆々の真っ黒な人型。

と思って見ているとギョロっと目が1つ、耳の辺りに出ると顔中を動き回り、正面で止まると俺をジッと見て来るので「俺の言葉は理解出来るか?」と問いかけると口元が裂け、鋭い牙を見せながら大きな口を開け、低い声で答えた。


『俺は、俺達は……どうなった?』


4人の意識があるのかな?

とりあえず。


「お前の名前は『ガト』だ」


前世の言葉で黒という意味である。

見たままの名前ですまんな。


『俺は、ガト……俺達はガト』


これはちょっと試してみるかと思い、ガトを連れて残りの3人が倒れてる場所へ向かい、3人にも同じように呪属性魔法を発動させ肉塊にすると、ガトに合体させる。


肉塊に包まれて暫くすると元の真っ黒な筋骨隆々の人型に戻り、ギョロっと目が4つランダムに出ると顔中を動き回り、正面に4つ集まって俺を見ると口元が裂け、低い声で話し始める。


『主、俺達は何をすればいい?』


どうやら呪いを合体させる事は成功したな。

強さはどんなもんか魔物が居れば確かめられるんだけど。

俺が相手をすれば一発でやられそうだし。

だって0歳児だからね。


というか、人間を基に作れば会話が出来るのか、これは良い発見をした。

今後もクズが居れば呪い生物にしてやろう。


「じゃあ、お前の知ってる事を教えてくれ、ここはどこだ?」

『ここはオルデクト王国の南にある『名も無き国』の滅んだ王都』

「なぜ滅んだのか知ってる?」

『知らない、噂だと100年程前に滅んだと聞いた』


そんな前に滅んでたのか。

なのにその後はまったく手付かず。

まあ、ここが滅んだ事は別にどうでもいいけど、生活するためには人が居る街に行かないと今の俺じゃ自給自足なんて出来ないぞ。


「もうちょっと話を聞きたいんだけど……その前に座ろうか」


周囲を見回し、地下室に置かれているテーブルと椅子を発見したので歩いて行き、椅子に上るのを手こずってるとガトが落ち上げて座らせてくれた。


「ありがとう、そういえば、何か食料はある?」


地下室の壁沿いにびっしりと木箱が積まれており、中に何が入ってるのかは分からないが、ここをアジトにしてたなら何か食料があるはずだ。


案の定、ガトが奥の木箱を2つ持って来てテーブルに置くとその中には、硬そうなパンと果物が入っていた。

0歳児にパンと果物かぁ。

まあ、ミルクなんて無いよな。

せめて水があれば、柔らかくして食べられるんだが……。


「あっ」


スキルのレベルが上がった事で呪術で、何が出来るか感覚で更に分かり、その中には水を出せるものもあった。

さっそく瓦礫の欠片を集めてもらい、イメージしながら『W』を刻む。

ウォーターのWだ。


ガトにパンを千切ってもらい、欠片をパンに近づけると欠片から水が流れ出す。

ちなみに呪術を発動する方法は、刻む時のイメージによって変わる。

例えば魔力を流せば発動するとか、今やってるように何かが近づいたら発動するとかだ。

レベルが上がればもっと細かく出来ると思うけど、今はそんなところだな。



黒い筋骨隆々のガトと、目玉だけのアルに見守られながらパンを水に付けてちびちび食べ始める。

……うん、食えなくはない。

マズいけど、もっと酷い物を食った事があるからそれよりはマシだ。

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