第3話 呪人。

呪からアルを作った後俺は、食料を探すために街の中を探索する事にした。

メイン通りを歩きながら白骨死体に纏わり付いてる呪いを吸収し、食堂や商店っぽい建物を見つけると中に入る。


「アル、食料が無いかそっち側から探してくれるか?」


そう言うとアルは頷き、フヨフヨと左側へ向かったので俺は、右側から廃墟となった商店の中を歩いて行く。


棚には殆ど物は残ってない。

殆ど持ち出した後か元から無いのか……いつぐらいからこのままなんだろう?

それに、どこかの国が侵攻したようには思えないんだよなぁ。


街中を見て回って気付いた事がある。

もし他国の侵攻なら死体は片づけるはず。

それにこんな大きな街を破壊して放置するのは、戦争とはまた違う理由で滅んだ可能性が高い。

もしかしたら魔物かも?


そんな事を考えながら建物の中を探し回るが食料は見つからず。

他の建物を探し回るが既に何も残ってなかった。

もしかしたら既に誰かが漁った後なのかもしれないと思い、せめて服か履物は無いかと家らしき建物を探すと子供用の服と靴を発見。


ヨレヨレの白いシャツに茶色いズボン。

そして茶色い靴を履いてマントをそのまま上から纏う。

丁度姿見があったので確認すると、この世界での自分の顔を見て驚く。


「女の子みたいな顔だな」


黒髪黒目の女の子っぽい顔をした男の子。

ちゃんと息子が付いてるのは確認してるからな。

将来はイケメンになるかもしれない。

今までにもイケメンに転生した事はあるけど、呪いのせいでかなり嫌な思いばかりしたからなぁ。

今世はどうなる事やら。



鏡で自分の姿を見ているとアルが横に飛んで来たので鏡越しに目が合うと、ふと感覚でアルが何を考えているか分かった。


「人が居る?」


アルによると近くに人が居るとの事。

どの辺りに居るのか聞くと案内してくれるらしく、フヨフヨ移動を始めるので後を付いて行く。


建物を出て歩いて行くとグルっと回るように進んで行き、先程まで居た建物の裏側へ向かうと鉄柵に囲まれた広い敷地の中に、大きな屋敷が建っているのを発見。

アルが言うにはこの屋敷に人が居るらしい。

こんなゴーストタウンに人?

生き残りか?


正面の鉄格子の門は開いてるのでそのまま歩いて屋敷に向かって中に入って行くと、屋敷の2階左端にある窓から人がこちらを見てる事に気付く……いや、人じゃない。

一瞬人影かと思ったら人型をした真っ黒な黒い影だ。

感覚ですぐそれが呪いだと分かり、アルに人じゃなくて呪いの事を言ってるのか聞くと違うという。


って事は、誰かと呪いが同居してるって事か。

その人、大丈夫かな?

そんな事を思っているとアルが、フヨフヨ屋敷の中に玄関の両開きの扉の片方が少し開いてるのでそから入って行ってしまった。

俺は意を決し、扉を少し開けて中を覗く。


すると中は壁があっちこっち壊れており、天井も一部崩れている。

埃は溜まってるが人の出入りがあるのか足跡と、所々綺麗にされていた。

本当に人が居るようだな。


俺は中に足を踏み入れ、扉を静かに閉じるとロビーのように広い屋敷の中は静か……いや、下の方から微かに声がする。

左奥にアルが浮いてるのが見え、そのまま付いて行くと2階へ上がる階段の下に地下へ続く階段を発見。

声はこの下からしてるな。


『……しやす?』

『…や、当分……る』


何の話をしてるのかここからじゃ分からないのでそっと階段を下りて行くと、男が会話してるのがハッキリ聞こえてきた。


『近くの村はだいたい襲いやしたからねぇ』

『あの村、若い女が居なかったし、そろそろ女が欲しいっすよ』

『いや、そろそろ拠点を移すつもりだからな。女はその後だ』

『小さな子供が良いっすねぇ』

『お前の趣味は俺には分かんねぇ』

『綺麗な穢れの無い子供を汚すのが良いんっすよ』

『移動する準備を始めとけ』

『了解っす!』

『へい!』

『はい!』


会話の内容からすると盗賊っぽいな。

ってか、言葉が理解出来てるのが不思議だ。

今までは生まれて赤ちゃんの頃から自我があったし、周りの言葉を聞いて自然と覚えていたけど、今世は親も居なければ初めて聞くのに、なぜか理解出来る。

理解出来るという事は話す事も可能。


階段の一番下に到着して扉の前に立ってふと思う。

今の俺に倒せるのか?

生まれたての0歳児だぞ?

呪術と呪属性魔法はあるけど……即効性の呪いってあるかな?

……感覚で魔法ならいけそうだが魔力が足りるか微妙。

もうちょっと強くなってからじゃないと流石に無理か?

呪物を準備してから襲撃した方が良さそうだな。



そんな事を扉の前で考えていると屋敷に数人の人が入って来る音がして、扉の前でどうするか考える。

今から階段を上がっても間に合わないし、かと言って扉の中にも数人の盗賊が居る……詰んだ?

こんな生まれたての0歳児で死ぬとは、せっかく呪いを克服して転生したのに、いきなり死ぬ事になるとは……無念。


ここで死んで、また転生出来るのかも分からないんだよなぁ。

呪を克服しちゃったからね。

こうなったらどうなるか分からないけど魔法でやるか?


するとそこで、上の者達が地下へ続く階段の方へ近づいて来る足音がし、腹を決めて魔法を全力で放とうと決意するが……。


『おい、なんかこの中寒くねぇか?』

『それより身体の調子が急に悪くなってきたんだが?』

『お前もか? なんか俺も……眩暈が……』

『とりあえず下りて……やべぇ、滅茶苦茶寒い』


と話し声が上から聞こえて来た。

なんだ?

体調不良か?

なら俺でも倒せるかも?

武器があれば楽なんだけど。


前世では人を殺した事もあるので、抵抗はまったく無い。

生きるのに必死な世界もあったからね。

それよりもそろそろ下りて来る。



「あぁ、やべぇ、身体が重い……ん?」

「どうした? さっさと下りろよ」


階段の上に姿を現した小汚い男は、俺を見て目を擦る。


「下にガキが見えるんだが……幻覚か?」

「はぁ? この廃墟にガキなんて居る訳……見えるな」

「ガキ、ここで何して……」


一番前の男がそう言って階段を数段下りたところでいきなり意識を無くしたように、前に倒れて階段を転げ落ちて来る。


「おい!? だいじょう……」


更に2人目の男も同じように落ちて来た。

その後、合計4人の男達が階段を転げ落ちて来たところで、扉が開いて中からスキンヘッドの小汚いおっさんが姿を現す。


「誰だコラァ!? ヒャッ!?」


スキンヘッドの男が俺を見るなり小さな悲鳴を上げると、白目を向いて泡を吹きながらその場で崩れ倒れる。


えーっと、何が起こった?

俺はまだ何もしてないんですけど?

階段を落ちた奴らは死んでないけど気絶してるようだな。

スキンヘッドは俺を見るなり悲鳴を上げて気絶するし……俺ってただの0歳児ですよ?


扉が開いたままなので中を見ると、他にも3人の男達が目を見開き俺を見ていた。

何で?

鏡で自分を見たけど特に変なところは無かったけどな?

こいつらには化け物のように見えてるのか?

0歳児でも見た目は2歳か3歳くらいかと思うんだが?

とりあえず話しかけてみるかと思い、中に入りながら声を掛けると。



「お前ら、盗賊だよな?」

「んぐっ!? あ、が……」


左側に立っていた男が急に苦しみだして喉を両手で抑え、苦しそうにしながらその場で倒れる。


「えぇ~、何それ……ちょっと話を聞きたいんだけど?」

「く、来るな!! やめろ、やめてくれ!! ぎゃあああああああ!!!」


今度は腰を抜かし、何かに怯えるように後ずさると頭を掻きむしりながら絶叫して気絶……たぶん死んでないと思う。

何がどうなってんの?

魔法は使ってないぞ?

何か危ない薬でもやってんのかな?


最後の金髪の男に目を向けると、身体をガタガタ震わせながらなんとか口を開いた。


「お、お前……なな、なんだ? ゴーストか悪霊か!?」

「はっ? いやいやなんで魔物扱いなの? 見た目は2歳児のただの0歳児だけど? それより、何をそんなに怯えてるのか聞きたい」

「……お前が発してるその禍々しい気配は、なんだ!?」


俺が発してる禍々しい気配?

何それ?

特に何も出してないけど?

自分の身体や手を見ても何も出てないし、今はこいつらを殺そうとかは思ってないぞ?

………………。

…………。


「あっ」


もしかして種族のせい?

呪人という種族の特性でこうなってんのかも?

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