は~るばる来たぜ、箱だけ

大黒天半太

段ボールと言う名の境界線《ボーダーライン》

 インタホンを通じて配達員の

「お届け物です」

 と言う声に返事をして、マンションのドアロックを解く。


「ありがとうございます」

 数分待って自宅玄関のドアホンのチャイムが鳴り、ドアを開けて受領書に判を捺き、荷物を受け取る。


 軽い。

 封をされた段ボール箱だと言うことはわかるが、あからさまに軽い。

 箱を両手で抱えたまま、上下左右に振ってみるが、中からは箱とぶつかる中箱のような固形物の音も、紙や布などの何かが擦れる音もしないし、重心の移動が起きた気配もしない。

 極論、中で、何かが動いた気配がしない。


 空き箱か?

 何のために?

 重さはないにせよ、このサイズだと結構な値段がするはずだが、受取人払いではなく差出人が支払い済みだった。


 空き箱を送り付けて、宅配料金を相手に払わせると言う、何かの嫌がらせでも無さそうだ。

 そんな悪戯をしそうな知り合いにも心当たりは無いし、実際、そこまで手間をかけても、実害はせいぜい五~六千円程度の宅配料金でしかない。


 むしろ、これを受け付けた貨物業者は大丈夫なんだろうか……。


 これだけ軽くて、箱の反応からも、あからさまな空き箱と思われるものを、料金受け取って送付先に送るって、受注する前にどこかで誰かがチェックが入れるべきではなかったのか?


 荷物の封入漏れで、外箱だけ送ってしまったとか。


 箱が回収を要するような特殊なモノで、箱の回収手順と取り違えて、送付時に逆に空で送ってしまったとか。


 どこか、誰かが、途中で注意喚起してツッコミ入れておけば、確認できたミスとかではないのか。


 未開封で送り返すことも、頭を過ぎったが、意を決して開けると言う方法もある。

 

 いやいや、待て待て、着いてから手を変え品を変え何度も確認した後で、それでもわけがわからないという、何故こんなあやしい箱を開けようとした、俺。


 何か、無辜の人間を巻き込んでしまう魔力のようなものでも、この箱から出てるのか?


 何かの呪いか?


 ツッコミ待ちのボケか、この段ボール箱は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

は~るばる来たぜ、箱だけ 大黒天半太 @count_otacken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ