グラントの物語4

「リサ、お大事にね」

「ありがとう」


 ステフと別れて、部屋に帰ると、リサはソファで丸まって眠っていた。周りにいろいろ散らかしたままで。

(まるで小さな子供…だな)

「リサ!そんなところで寝てたらダメだよ。せっかく良くなってきたのに」

 リサを揺すって起こす。

「あ…、お帰りなさい」

 彼女は目をこすりながら起き上がり、あぐら座りになって、

「ね、ね、ステフさん、元気だった?何か言ってた?」


 僕はついあの失言を思い出してしまった。リサは目ざとく、僕の目がわずかに泳いだのを見逃さなかった。

「あ、また何か余計なこと言ったんでしょ!」僕を指差す。

「言ってない言ってない。そんなふうに人を指差すのはよくないと思う」

「絶対アヤシイ」

 僕はキッチンに逃げ込みながら、

「ステフがね、僕達が正式にパートナーになったら、パーティーしようって言ってたよ」

「え、ホント?素敵!」

 リサは僕の大好きなあの笑顔をみせた。


 それから僕達は、残りの休暇の日々をほとんど出かけることなく、部屋で過ごした。


 最後の夜、リサは僕の腕の中で、

「ただダラダラしただけのお休みだったね」と、頭を僕の胸にあずけて、目を閉じた。

「ゆっくり休めたし、君とずっと一緒にいられたからよかったよ」

 毛布を引き上げ、リサの肩にかける。リサの寝息が聞こえる。

 僕は彼女をそっと抱きしめた。

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