リサの物語13

 新郎、新婦の周りで、花びらをまく人達。たくさんの祝福。

 キスを要求されて、ためらいも照れもなく自然に歩み寄るふたり。


 4人は少し離れて、それを見ていた。


「やっぱりお似合いだよね」と、ステフ。

「グラントが僕達の中で最初にパートナーを見つけるとは。全然、知らなかったよ。いつのまに、という感じだけど」ラディが言った。

 すれ違いが多い中で、ふたりの時間を積み重ねるために、どれだけ多くの努力をしたのだろうとディープは思った。

「努力は報われる、だね」

「新婚旅行って行くのかな?」モーリスが言った。

「いや、あのふたりは、日常が宇宙を巡る旅みたいなものになるから。あえて旅行はしないんじゃないか?そもそも地上のリゾートにいるふたりの姿なんて、イメージできないし」

 ラディが言って、

「そうだね」モーリスは笑った。


 自分以外の誰かを大切に想い、その幸せを願う、そういう相手にめぐりあえることこそが、きっと幸せなのだと思う。


「あ、見て!」ステフが指さす先で、

 そのときちょうど吹いた春風に、本物の花びらが舞って、その花吹雪に包まれたふたりは、まるでたくさんの祝福を受けているようだった。


 ステフはこの一瞬一瞬を切り取り、あとに残しておきたくて、何枚も何枚もシャッターを押す。


 ——たくさんの笑顔があった。


 手をふる4人に気がついたグラントは、リサに声をかけてその手をとり、ふたりは並んで4人の待つ方へと、歩きだした。

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