それから
ステフの物語1
ふたりを祝福するパーティーで、僕達はこんな会話を交わした。
グラントとリサのふたりは、僕達のそばに歩みより、
「みんな今日はどうもありがとう」
「ありがとうございます」
そろって、お辞儀をした。
僕はふたりに声をかけた。
「リサ、とっても綺麗だね。あらためて、おめでとう」
「ありがとうございます」
「グラントは、まあまあってところかな」
そうからかっても、
「いろいろありがとう、ステフ。僕は今日は花嫁の引き立て役だから」
グラントは、そんなことを平気で言うようになっていて、頬を染めたリサは、とても綺麗だった。
ふたりの船の設計改造をしたモーリスは、最近もメンテナンスの関係で、ふたりとは話したばかりだと言っていた。
「グラント、リサ、おめでとう」
「モーリスさん!ありがとうございます」リサはモーリスを軽くハグした。
(あ、ずるい。と、みんな思った)
「私達、お世話になりっぱなしで」
「困ったことがあったら、いつでも言ってね?」
「ありがとう、モーリス。今日は来てくれて。大丈夫?」
そう言うグラントに、モーリスは笑って、
「大丈夫。お目付役がふたりもいるからね」
モーリスは、ラディとディープのふたりをふりかえった。
「リサ。ラディとディープに直接会うのは、はじめてだよね?」
グラントがふたりを紹介する。
「はじめまして。リサです」
今日のリサはいつもに増して可愛い笑顔で、ニッコリとした。
(花嫁だもの、あたりまえだよね)
ふたりともそれぞれ「おめでとう」と言っていた。
「こっちがドクターのディープで、ラディは—」
グラントがそこまで言ったとき、リサは何かを思ったらしく、ハッとして
「『とっても口が悪いけど、料理が上手なお友達』ですよね?私、彼から聞いたことがあります」
「リサ!」グラントがリサを止めようとするのと、
「グラント」ラディの声が重なった。(…コワイ)
「グラントは僕のことをそんなふうに話しているんだ?」
ディープが、ラディの袖をそっと引っ張って、なだめようとしているのがわかった。
(だってお祝いの席でしょ?みんな笑顔で、だよね?)
リサは驚いたのかちょっと目を見張ってから、ピョコンと頭を下げた。
「ごめんなさい、私。はじめてお会いしたのに…。えーと、私にお料理を教えて下さいっ!」
「リサ、突然何を言い出すのかと思った」
そう言うグラントにかまわず、真剣な様子で、
「私、ずっと寮育ちなので、何もできなくて。お願いします!」
「僕は気にしてないし、そのことはゆっくり一緒にやっていけばいいよって話したよね?」
「私だって焦ってるわけじゃないけど、でも、美味しいものを作れるようになれたらいいなって、ずっと思ってたの!」
(うわー、グラントのために、だよね。のろけだよね?これって。確かに僕達はラディの嫌味に耐えて鍛えられて、それなりにできるようになったんだけど。あー、そういう意味では感謝)
「あの…」ラディがやっと口をはさんだ。「できればそう言う会話は、ふたりだけでやって欲しいと思うんだけど」
ふたりはハッとして、何やら恥ずかしそうに話をやめた。
そして、ラディはリサに向かって、
「リサ。聞いていると思うけど、僕の教え方は甘くないよ?それで良ければ」
「うわっ、ありがとうございますっ!」
リサのまぶしい笑顔に、そのとき僕達はみんなハートをつかまれていた。
ふたりが別のグループへ挨拶するために移動したあと、
「いいコだよね〜」ディープがしみじみと言っていた。
「うん」ラディがうなずいた。
「ひとりじゃなくて、ふたりでいるのもいいなぁって思えるようなそんなふたりだよね」モーリスが言った。
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