リサへの手紙

 僕のとなりを歩く君へ


はじまりは君からのメールだった。

覚えのない差出人に、メールを読みながら、僕は連絡先を教えた君のことを思い出した。

背伸びした堅苦しい文章と内容は、普段は絶対にこんな言い回しはしないはずで、可笑しかった。

もっと気軽な内容でいいよと返信したら、それから君はときどき近況を知らせてくれるようになったね。


子供の頃の記憶は、どのくらい覚えているものなのだろう。

当時の君はまだ8歳くらいだったはず。申し訳ないけれど、僕は君に声をかけられるまで、すっかり忘れていて、すぐに思い出せなくて。でも君は僕をずっと覚えていたことになる。


厳しい毎日をがんばっている君に、いつもひとりでがんばっている君に、君はひとりじゃないことをわかってほしくて、話したね。僕はいつも君のそばにいられるわけじゃないから、お守りがわりにプレゼントした。星のピアスを。

君は17歳になっていた。


事故を知ったとき、僕はすくんでしまって動けなかった。情けないくらいに。もう二度と大切な人を失いたくなかったから。

ボロボロの君を思わず抱きしめたとき、もう君を離したくなかった。

 「大好き」という小さな声に

 「僕もだよ」と応えてた。

操縦桿を握っていたのが君だったことをあとで知って、とても驚いたよ。度胸があって腹をくくった時の君は、僕より強い。きっとね。


僕は君にあげられるような特別なものを何も持っていないけれど、代わりに僕の名前を贈ろうと思う。

僕の大切な人が呼んでいてくれたように、これからは君が呼んでくれたら、きっと僕の心はあたたかくなる。

僕達は家族になる。


君を待つことは、いつもとても楽しかったよ。


リサ、僕の人生を豊かにしてくれてありがとう。

あの日、僕の中に小さな明かりを灯してくれた、まだ少女だった君と出会えて本当によかった。

あのとき、僕に声をかけてくれてありがとう。

ずっと覚えていてくれてありがとう。


僕のとなりを歩いてくれる君へ。

君がいつも笑顔でいられますように。


僕達はどこまでも一緒に星の空を巡ろう。

はるか遠くまで。

そこに道の続く限り。

手と手をとって。

いつまでも。


僕の大切な人 リサへ


                   グラント ユリウス ノア


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