リサの物語3

 あの戦争で失ったものは、たくさんある。

 資材、優秀な技術者、そして、宇宙船。整備不良が原因とされる事故がおきるのは珍しいことではなかった。訓練で使用する船も払い下げられた老朽船で、整備するのも訓練生だったから、いつ何が起こるかもしれず、それも訓練の一部だとされていた。


 その日、訓練生を多く乗せた船が滑走路に不時着して、訓練は全て中止となり、私達は救助作業に加わった。

 私はメグがその船に乗っていることを知っていて、長い死傷者リストの中に名前を見つけ、病院に急いだ。

 メグは片目と片脚の膝から下を失った。

「リサ。私、もう飛べない…」

 私は何も言えず、メグをそっと抱きしめることしかできなかった。


 人工器官の発達により、置き換えられた身体の機能に問題はなくても、もう操縦士を目指すことはできなかった。

 リハビリが終了し、退院が決まったとき、メグは私に言った。

「リサ、私の分まで飛んで!私はあんたを地上からサポートするから」

 メグは目標を管制官に変えて、訓練センターを去っていった。


 その出来事があり、私は自分の誕生日のことなどすっかり忘れていた。


 宇宙を飛び回るその人と、訓練で忙しい私とは、直接会う時間はほとんどなかった。ときたま、宇宙港の遠くにその人を見かけたり、偶然すれ違ったこともある。


 だから、その人から直接連絡をもらったときは、とても驚いた。


 

 

 

 



 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る