第3話

ライオンマンが回復カードの少女の前に出る。

魔王その1「いけ!ライオンマン、ライオンパンチだ!」

ライオンマン(ちから抜けるから技名も言わないで…)

気を取り直し、ライオンマンが拳を振り上げる。

青年「ムっ!?」

うなりを上げてライオンマンのパンチが回復カードの少女に向かって放たれた。

回復カードの少女(い、1ターンだけだけど、プレイヤー様が延命できる。…これが私の精一杯)

固く目を閉じて衝撃に備える回復カードの少女。

“パーン”と乾いた打撃音が響く、が、回復カードの少女にはダメージが感じられなかった。

おそおそる目を開ける回復カードの少女。

そこには青年の背中があった。

ライオンマンのライオンパンチをてのひらで受け止めながら青年が言う。

青年「貴様、少女に向かって何をする!」


ライオンマン「え?え??」

想定外の事態に動揺を隠せないライオンマン。

そして想定外なのはそこにいた全員にとって、だった。

「「なんでプレーヤーがカードを守る???」」

女神と魔王その1が声をハモらせて疑問を叫ぶ。

青年「カードではない。彼女にはレアという立派な名前がある」

質問の答えになっていないのだが、その場には反論を許さない空気が出来上がった。


拳を握り、青年が言う。

青年「暴力は好まない俺だが、暴漢には正義の鉄槌を下さねばならぬ」

ライオンマン「いや、だってカードバトル…」

青年「問答無用!」

青年のこぶしがライオンマンにヒットする。

青年によるダイレクトアタックによってライオンマンの体力ゲージはゼロとなり、ライオンマンはカードになって場の隅に移動した。


魔王その1「ラ、ライオンマンを一撃だと!?」

ハッとして女神が魔王その1に向かって言う。

女神「そっちのターン、終わったわよね?」

女神が青年の方に向き直って言う。

女神「こっちのターンよ!回復カードの少女で相手プレイヤーを攻撃…」

女神が言い終わる前に青年が言う

青年「レアにそんな事はさせない。」

青年がゆっくりと魔王その1に向かって歩き出す。

青年「貴様にも正義の鉄槌を撃つ。願わくば1発で改心してくれ。無論、一発で改心出来ないのであれば、何発でも拳を撃つ。」

ウルトラレアのライオンマンを一撃で葬った青年が、魔王その1に向かって歩みを進める。

一歩一歩ごとに、滝の様な汗が噴き出す魔王その1。

そして青年が魔王その1の前に到着した時、魔王その1は決心した。

魔王その1「降参ですーーーー」


一瞬きょとんとした後に、女神が喜びながら叫ぶ

女神「やった!勝利よ!!」

青年は拳を降ろしながら言う。

青年「わかった。君の改心の言葉を信じよう」


こうして短きにわたる青年と魔王その1とのバトルは終焉を迎えたのだった。


-


女神「降参したからには…そうね、カードケースを運営に返却しなさい。」

魔王その1「完全降伏だからな。止むを得まい」

潔く答える魔王その1。

魔王その1「運営よ!カードケースを返却する」

そう宣言すると何処からともなく運営が現れた。

運営「ではカードケース回収しますね」


魔王その1から運営がカードケースを受け取った瞬間、場の隅にあったライオンマンのカードが青年のカードケースに入った。

女神が事象について補足説明する。

女神「場に出ていたカードはバトルが終わったら勝者のカードになるのよ」


青年「カードが1枚入っただけで、かなり重さが変わったな」

女神「カード自体にも重さ設定があって、レアが1kg、スーパーレアが10kg、ウルトラレアが30kgなの。大丈夫?」

青年「持てない事はない。野球で鍛えてきたからな」

運営「転生者であれば、この“カードの重量設定”を無視できるんですけどね」

運営が女神の方をちらちらとみる。と言うのも、この“転生者が重さを無視できる設定”は最近になって女神がごり押しで差し込んだ設定だったからだった。

運営「ゲームバランスを調整する方の身にもなってほしいんですが…」

そう言いながら運営は消えていった。


魔王その1が立ち去るべく背中を見せながら言う

魔王その1「勇者よ、其方そなたに一つ教えてやろう。魔王その2には弱点がある」

その時、魔王その1が去ろうとしている方向とは真逆の方向から、かなり棒読みの声が聞こえてきた。

魔王その2「みつけたぞ、ゆうしゃ、ショウブだ」

小学生の如く両方の腕をピンと伸ばして紙のメモを持ち、メモに書いているセリフを読みあげる魔王その2がいた。

魔王その1「魔王その2は国語が苦手だ。特に読書が苦手らしい」

女神「…そのようね…」

そして女神はこうも思った

(その弱点、カードバトルに関係ないと思うんだけど…)


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