第22話 🤎茶部屋 -後-

 数分後、ホールで大の字になってへたり込む鎗目の姿が。


「はぁっ…!ふぅっ………」

「まあー、悪くなかったけど私の勝ちだね」


 あのETSUと同等のダンススキルを持つ八ツ波に勝てるわけもなかった。

 ただプライドは一丁前だ。


「…わっ…わたしのっ…か、ちっ…はぁっ…」

「いやいやいやいや!無理がある!」

「早くっ…いけっ…」


 鎗目の執念に八ツ波は折れたのかため息をつく。

 全力でぶつかったことで少し心が通じたような気持ちを薄らと感じながらも、鎗目のわがままを聞き入れた。


「…はいはい。わかったよ。おーい、ETSU」


 練習中のETSUがこちらを向く。

 同じ白部屋の高戸たかとも一緒だ。


「2人も一緒にやろーよ。コイツも入れて。茶部屋と白部屋の合同練習」


 ETSUと高戸は顔を見合わせる。


「悦叶さん。いいんじゃないですか?」

「…いいよ」

「ありがとー。ほら起きろヤ○マン」

「やりっ…のめ…殺すぞ」

「はいはい、起き上がってから言ってね〜」


 こうして4人は合同練習を始めた。

 鎗目はなんだかぎこちない様子で練習をしていたが、同じ目標の4人は自然と息が合い、心の底から楽しんでいるように見えた。



 その晩。


「ふへっ…ふへへ…今日いっぱい悦叶様と話せた…ふへへへへ…」

「お前ホントETSUのこと好きな」


 ハッと我を取り戻し、また八ツ波を睨みつける。


「…おい、ガキ」

「なんだよヤ○マン」

「ガキ。マジで殺す」

「嫌ならガキっていうのやめろ」

「…八ツ波」

「はーい鎗目ちゃん」


 鎗目が何かを言いたそうにしているが全然切り出してこない。


「何よ一体」

「今日は、その、あの…あ…」

「?」

「今日は…あ、あり…ありがとう」


 鎗目は素直に、八ツ波に感謝を伝えたのだった。


「えっ何っキモっ」

「っ〜〜…!殺すッ‼︎」

「あー嘘嘘!冗談!冗談だって!急に素直になったからビックリしただけ!」

「悪い?」

「いや悪くはないけど…」


 ダンスバトルで心が通じたというのもあながち間違いではなかったようだ。


「そんじゃ明日もETSUとやるかぁ」

「…いや」

「え?やんないの?」

「…今日たくさん見れた、から…明日も見たら、バチが当たる」

「意味わからんけどETSUはやってくれるって」

「恐れ多い…」

「はぁ、どんだけ好きなんだよ。じゃあ明日は私と練習ね」

「そんなに言うなら、仕方ない。やってあげよう」

「…アンタ扱い辛いな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る