第29話 ❤️赤部屋 -後-

 数時間練習したが、ここの合同練習が一番の完成度を誇っていた。

 4人それぞれ個々のスキルが高く、他の練習チームも見惚れていた。

 青部屋の菊月きくづき本明ほんみょうが声をかける。


「お疲れ、4人ともすごい完成度だね」

「私も見てて感心しちゃいました…!

 プロデューサーさんの言っていた、誰かを落とすのが惜しいって言葉、とてもわかる気がします。この4人から2人しか残らないなんて…」


 高戸たかとは腹を括っているようだった。


「仕方ないよ。そういう合宿だからね」

ETSUエツはどう思うんだ?このシステムに関して」

「…うーん。僕は…」


 ETSUが答えを渋っていると、茶部屋の八ツ波やつなみが口を挟む。


「ETSUもみんなとやるの、楽しいもんね!決められないよね〜」

「……」

「あれ?否定しないの〜?」

「…別に」

「あれ〜?ETSUちゃんかわゆいでちゅね〜お顔が真っ赤でちゅよ?」


 そこに鎗目やりのめも現れる。


「ガキ、ETSUさんに生意気な口を聞くな」

「なんだよぉ、いつもは様呼びしてるくせにETSUの前だといい子ぶっちゃって」

「なっ…!」


 みんなが集まってるのを見て、緑部屋の俵田たわらだ袖山そでやまも顔を覗かせる。


「本当に楽しいわよね。結果はどうであれまたみんなで集まるのも楽しいと思うの」

「いいですね!絶対楽しいです!」



 それを遠くで見ていたプロデューサー鮫山さめやまは一つ決心をしたようだ。


「良い結束力だな」

「そうですね、とてもいい雰囲気です」


 清々しい程の笑顔で河岸かわぎしに命令する。


「急遽予定変更だ。今から会議するから松江まつえを呼んできてくれ」

「え?あ、はい。わかりました。えっ⁉︎鮫山さんなんですかその顔⁉︎」


 鮫山は新しい何かを企てているようだがその真相は如何に。



 合同練習を終え赤部屋に戻ってきた2人。

 真喜屋まきやが床に倒れ込む。


「ふぃ〜今日もたくさん踊って疲れたぁ」

兎架うかっちも前よりは体力ついたんじゃない?」

「ホンマに?いやぁ周りのみんな見てたら負けられんくて、成長出来てんなら嬉しいわぁ。えっちゃんにもたくさん教えてもらったしこのまま最終日まで頑張るぞ〜!おー!」


 意気込んだと思いきや、百百塚ももづかの表情はどこか暗くなった。


「…しかしあれだな。やっぱり、ウチらのどっちかが落ちるって考えたら…なんか、な」

「すずりん。らしくないんよ。落ちるかもしれん。でもこの合宿でやったことは無駄にはならん!」

「はは、あおいっちと同じこと言ってら」

「みんなそう思っとるんやって!だから結果なんて気にせず、真っ直ぐやる!それでいいと思うんよ」

「ちょっと前まで自信なかったのにすっかり良くなったな」

「一人だったら折れてたかも知れんけど、ウチもここに来て良かったってちゃんと思えるようになれたんはみんなのおかげなんよ」

「そうだね。ウチもこの合宿来れて良かった。兎架っち、最終選考も手抜かないからな」

「もちろん!抜いたらウチも許さんよ〜!」

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