第28話 ❤️赤部屋 -前-

【合宿十日目】


 今日は赤部屋の2人にフォーカスを当ててみる。


 百百塚鈴ももづかすず真喜屋兎架まきやうか



「すずりん〜…それは痛いんよ…ウッ」

「どんな夢見てんだ…」


 真喜屋が寝言を言っているのを横目に百百塚は起床した。


「さて、今日は…そうだなぁ。やっぱりETSUエツとは合同練習したいし、誘ってみるか」


 やはりどこの部屋もETSUのいる白部屋と合同練習がしたいようだ。



 百百塚が白部屋に訪れると高戸たかとが顔を覗かせる。


「おはよ〜起きてるか〜い」

「あ、百百塚さん。おはよう。どうしたんだい?」

「今日は白部屋と合同練習しようと思って」

「ああ!いいですね!でもお昼からになりますよ?悦叶えっかさんが起きてこないので」

「ウチの方も兎架っちが起きないからな〜。もうしばらく後になりそうだ」

「だったら、2人でランニングに行きませんか?私毎日走ってるんです」

「お、いいね。ウチも体動かしたいと思ってたんだ!」


 利害の一致した2人は早朝から一緒にランニングをすることにした。



「よーい、ドン!」


 百百塚も高戸も合宿2日目の砂浜20kmマラソンで走り切った。

 体力に自信のある2人は何周もコースを周り話を弾ませる。


あおいっち、ETSUと戦うことになるけど平気なん?」

「ええ、もちろんやるからには勝ちたいですから。でも新生DODを望んでるファンの方々は悦叶さんが脱退することを望んではいないでしょう」

「そうだな〜、それこそプロデューサーさんの気まぐれでもない限り同じグループにはなれないかも」

「残酷ですけど、それがこの合宿の意味ですから、やるしかないんです」

「でも本当に残った候補生はみんな面白いし、このまま脱落で終わるのはもったいないよな」

「それでもこの合宿で得たものは、次のアイドル人生に確実に生きますよ。だから私はここに参加出来ただけでも本当に嬉しいんです」

「碧っちはどこ行っても上手く行きそうだな!」

「そんな」


 一時間程走りっぱなしで、そろそろ戻らなくてはならない時間になる。

 宿の前に着くと2人は一時解散した。


「ではまたあとでお願いしますね」

「うん!ランニングも楽しかったよ」



 百百塚が部屋に戻ると真喜屋は目を覚ましていた。


「ただいま〜。兎架っち〜起きてる〜?」

「あっすずりんおはよ〜。どこ行ってたん?」

「白部屋の碧っちとランニング。ご飯食べたら白部屋と合同練習な」

「ほえ〜約束取り付けてくれたん?嬉しいわぁありがとうすずりん」

「いいのいいの!ウチがやりたかったから。ちょっとシャワー浴びてくるわ〜」

「いてらしゃ〜い」



 朝食を終え、赤部屋と白部屋のメンバーが集合した。

 真喜屋のマシンガントークが始まる。


「えっちゃん、話すの久しぶりやんな!赤部屋の真喜屋兎架まきやうかっていいます〜、私えっちゃんに聞きたいことあったんよねぇ、DODの振り付け全部やってるって聞いてすごいなぁ思って私も踊るの好きなもんで人様の曲勝手に振り付けて踊ってたりしててでもワンパターンになりがちというか、発想力?みたいのをどうやったら磨…」


 話の途中だったが百百塚が真喜屋の口を押さえた。


「ごめんなETSU。兎架っち喋り出したら長いんだよ」

「振り付けは」


 ETSUが、まさかの反応をする。


「発想力もそうだけど、他のパフォーマンスを見て勉強して引き出しを増やすのが一番良い。自分の力に限界を感じるなら他から取り入れるのが一番手っ取り早くて身につく。それにそれが自分の発想力への刺激になってそこから広がることもある」

「ちゃんと全部答えるんだ…」


 真喜屋が目を輝かせながらウンウン頷いていた。


「ほえぇ、なるほどなぁなるほどなぁ!えっちゃんは天才肌な上に勉強家なんやねぇ。あんなパフォーマンス出来んのも納得やわぁ、ありがとう、今日一緒にやって盗ませてもらおかなぁってあっ、あんまこういうの盗む本人に言わん方がいいかぁ、とにかく頑張らせていただきます〜」


 意外と息の合った2人であった。

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