第25話 🤍白部屋 -前-

【合宿九日目】


 今日は白部屋の2人にフォーカスを当ててみる。


 高戸碧七たかとあおいな島仲悦叶しまなかえっか



 午前7時。

 朝食の時間となりETSUエツを起こそうとする高戸。


「悦叶さん。起きてください、ご飯の時間ですよ」

「……」

「わかってはいたけど変わった人だなぁ。悦叶さん。悦叶さん」


 何度ゆすってみても起きる様子はなく、仕方なく支度をする。


「……」

「ふむ。今日もダメか。毎日お昼くらいに起きてるけど、体調は大丈夫なんだろうか。朝ご飯は食べないと良くないのに」



 高戸が一人で食事を摂っていると、緑部屋の袖山そでやま俵田たわらだから声がかかる。


「おはよう高戸さん」

「あぁ、おはよう」

「えつはいないの?」

「うん。朝はいつも起きてこないんだ」

「あら、そうなのね。今日は白部屋と練習したいと思っていたのだけれど」


 せっかくの誘いだったが、高戸は申し訳なさそうに断った。


「悪いけど、やるとしてもお昼からになっちゃうね」

「でもでも、碧七ちゃん一人だよね?」

「ああ、うん。でもいいんだ。スケジュールは決めてるから、これから走り込みなんだ」

「それにご一緒することは?」

「え?…いいけど」


 二人は高戸と一緒に練習することを決めた。


「決まりね、ご飯食べ終わったら行きましょう」

「いいのかい?二人の時間を」

「私達はETSUさんとじゃなくて白部屋と練習したいって言ったのよ。むしろそちらに合わせないと失礼だわ」

「一人だと寂しいよね!今日は一緒に頑張ろう!」

「…あぁ、ありがとう」



 3人は食事を終えると動きやすい服装に着替え、外に集合した。


「ランニング毎日やってて偉いね〜」

「悦叶さんがいたら違うプランも考えるんだけどね」

「あはは…」


 俵田がどこで入手したのか、最初の試験の完走者を記憶していた。

 高戸は完走していたようで、袖山は驚愕した。


「初日の砂浜ランニングも完走していたらしいじゃない。走るのが好きなのね」

「完走した人いたの⁉︎」

「悦叶さんから測ってないって聞いていたけど、測定されていたんだね」

「走り切った候補生が3人いたらしいわ。その一人が碧七ちゃんね」

「他の二人が気になる…」

「確か茶部屋の希野ちゃん、赤部屋の鈴ちゃんね」

「すごーい…それだけで尊敬…」


 高戸は体力測定についての自分の見解を話した。


「悦叶さんは体力は審査に関係ないと言っていたけれど、こう何日も練習時間があると練習量にも差が出てくる。そうなると体力をつけておいて損はないし、たくさん練習すればそれだけ上位に残れると私は思ってるよ」

「朝妃ちゃん。私たちも毎日走り込みしましょうか♪」

「ええっ⁉︎が…頑張りマス…」



 ランニングを終え、高戸は一度着替える為に部屋に戻ると珍しくETSUが目を覚ましていた。


「あ、悦叶さん。おはようございます」

「……」

「今日は緑部屋の方が合同練習してくれるみたいですよ」

「……」

「二度寝しちゃダメです!起きてください悦叶さん!」



 ETSUを叩き起こしホールに引き摺り込んだ。


「ふあぁ…」

「えつおはよう〜。もうお昼前だけど」

「合同練習…」


 高戸は緑部屋の二人を散々待たせた申し訳なさからも、ETSUを急かす。


「そうです。さ、準備運動してください?私達はランニングしてきたのでアップはバッチリです」

「合同練習って、どうしてもやらなきゃダメかな」

「「え」」

「ダメです。悦叶さん。お互いの為になるのにどうしてやらない選択肢が出てくるんですか?」

「みんなは必要かもしれないけど僕には必要ない」


 高戸の中でプツンと何かが切れたようで、ETSUに説教を垂れる。


「ああもう聞かない人ですね!私達候補生からしたら悦叶さん、あなたはスターなんですよ!あなたを見て学ぶことは多いし、あなたから教えられることもきっとあります、それなのに悦叶さんがダメダメヤダヤダ言ってたらどうしようもないんですよ!悦叶さんだけの問題じゃなくて私達候補生の未来の為でもあるんです。これから一緒に活動するかもしれないであろう候補生の為に一肌脱いでやろうって気持ちはないんですか?」

「わかった…耳が痛い…」

「よしじゃあ準備運動しましょう!私手伝いますよ」


 ETSUを叱る高戸を見て緑部屋の二人は唖然とする。


「碧七ちゃん、息継ぎしてた?」

「ETSUさんのお母さんみたいだったわね」

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