第18話 候補生『高戸碧七』

 対戦相手と相部屋になった候補生達。

 今日の夜からその生活が始まる。



 菊月律伽きくづきりっか本明雨ほんみょうあめ

 💙青部屋


 何度か顔は合わせたものの、しっかり挨拶をしたこともなかった二人は改めて挨拶を始める。


「改めてよろしくお願いします。本明雨と申します」

「よろしくね!律伽って呼んで?」

「はい!よろしくお願いします」

「しかし対戦相手と相部屋とはね、仲良くなったら辛くなるね」

「私はお互いを知った上で戦えるのは良いことだと思いますよ。遠慮しないでくださいね?」

「もちろん。手を抜く気はないよ」

「良きライバルに、なりましょう!」



 鎗目萌楠やりのめもなん八ツ波希野やつなみきの

 🤎茶部屋


 ETSUに喧嘩を売る八ツ波は目立っていたようで、鎗目は彼女を認知していた。


「あなた、ETSUに喧嘩売ってた…」

「そ。DODリーダー候補の八ツ波希野よ」

「あんまり生意気言わない方がいいと思う。ETSUさんに失礼」

「あら。アンタもETSUのファン?悪いけどETSUには負ける気しない」

「それは私に勝ってから言ってね」

「もちろん、アンタにも負ける気はしないよ。私に敵なんていない」

「その自信、どこから来るのか知らないけど、このオーディションはそんなに甘くない。私だって負けられないし、負けたくない」

「なんでもいいよ。アンタは私の引き立て役になってこのオーディションから去るの」

「本当に生意気」



 俵田彩世たわらだいろせ袖山朝妃そでやまあさひ

 💚緑部屋


 二人は初対面だった。

 大人っぽい俵田に、子供っぽい袖山、意外といいコンビになるのかどうなのか。


「初めまして!袖山朝妃っていいます!お願いします!」

「初めまして。俵田彩世です」

「こんな綺麗な人と一緒なんて緊張しちゃう…一週間、よろしくお願いします!」

「緊張なんてしなくていいのよ。そうねぇ…もっと仲良くなる為にあだ名を付け合うのはどう?」

「あっ、いいね!」

「じゃあ私のことは"いろっちゃん"って呼んでちょうだい」

「えっ…いろっちゃん…?」

「うふふ、冗談よ朝妃ちゃん」

「は、はぁ…」



 百百塚鈴ももづかすず真喜屋兎架まきやうか

 ❤️赤部屋


「よろしくね〜、ウチは百百塚鈴!負けないよん!」

「よろしく〜すずりん」

「すずりん…?」


 ヘンテコなあだ名をつけられて困惑する中で、真喜屋は怒涛の言葉を並べ立てる。


「私ここまで残れると思ってなかったんよぉ。みんな凄いダンスするやんねぇ?もしかしてDODに入れたらなんて想像したらめちゃ楽しくて。

 でもでも、私も負けたくないっちゅうか、どうしたら合格できるかなぁって考えてんけど私バカやんわからんくて、とりあえず自分の出来ること出来るだけやろかなー思ってて。

 あ、私真喜屋兎架って言います〜呼び捨てで呼んでもらって構わんので、すずりん、よろしくなぁ」

「あははは!めっちゃ喋るじゃん!兎架っち、よろしく!一緒に頑張ろうな!」



 そして、ETSUエツと相部屋になったのは…。


 高戸碧七たかとあおいな島仲悦叶しまなかえっか

 🤍白部屋


「高戸です。よろしくお願いします悦叶さん」

「うん」


 かしこまる高戸だったが、ETSUは軽く聞き流した。

 ここでも馴れ合う気はないのだろうか。


「悦叶さんはどんな気持ちでオーディションを見に来たんですか?」

「どんな…?」

「やっぱり自分と一緒にやるかもしれない人が集まってるわけだから、見てて楽しいんじゃないですか?」

「…まあ。色んな人がいるなとは思う」

「私も悦叶さんに、いや、ETSUに憧れてここに来たので一緒になれて嬉しいです」


 純粋な尊敬をぶつけてくる高戸に、ETSUは違和感を覚える。


「…ヘンだよ」

「え?どうしてですか?」

「僕の対戦相手ってことは、僕か、君が、DODに選抜されるんだ。最初で最後の戦いなんだ。どうしてそんなに楽しそうなんだい」

「わかってますよ。だから私も、全力で悦叶さんを倒します。悦叶さんのいるDODは魅力的です。でも、このオーディションでそれが覆るならそれもDODの形なんだと思います」


 高戸はどうやら譲る気はないようで、下克上さえも狙っている。


「ま、それには僕も同意だ。DODのリーダーの座を譲るつもりは毛頭ないけど」

「それでいいんです。戦うのが、楽しみです」

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