第5話 リアイドール
結成から二ヶ月。
このライブの最後にはついにリアイドールの発表がプロデューサー直々に下される。
あれから3人は、
今となってはDODを続けたい、抜けたくないという気持ちが宿っていた。
その甲斐あってか、DODの人気は結成当初よりも大きく盛り上がり、この4人がリアイドール発表となるこのライブを見届けようと多くのファンが駆けつけていた。
ライブは大成功に終わった。
しかし
鮫山がマイクを持ちステージに現れる。
『ではリアイドールメンバーの発表をします』
DOAのファンはそのシステム、歴史をよく理解している。
誰一人として騒ぎはしないし、リアイドールメンバーを素直に送り出すことが一種の儀式のようなものなのだ。
誰もが耳を立て、緊張が走る。
しかし現実は。
『
残酷だった。
『
リアイドールメンバーは。
『
「SNSでも告知しておりました通り、それに伴いまして、DOD第二期生のメンバーを募集しておりました。
現在も選考中で、決定次第オーディションを開催したいと考えております。今後ともDODをよろしくお願いいたします」
それだけ告げると鮫山は舞台袖にはけて行った。
そのままメンバーからの挨拶があり、ライブは終了となった。
…
楽屋にて、AYEが言った。
「ダメだったね」
KOHは納得がいかないのか怒鳴り散らす。
「こんなのおかしいだろ!3人がリアイドール⁉︎残されたのはETSUだけ⁉︎」
AYEは結果を受け止めているのか、KOHの言うことに冷静に返した。
「だって、わかってるでしょ?私達、頑張ったけど、頑張れてなかったんだって」
「な………あたし達、頑張ってただろ!CUWも!AYEも!………頑張ってたじゃんか…なんで…」
「KOHちゃん。頑張った、でも、ダメだった。…受け入れよう」
CUWも諦めたように話に加わる。
「私達がプロデューサーに弱音吐いた時からもう決まってたのかも…」
「………そんなっ」
今にも全員が泣き出してしまいそうな雰囲気の中、ETSUが楽屋に現れた。
「みんな」
気まずさからAYEとCUWは目を伏せたが、KOHはETSUに確認したい事があった。
「なあETSU、お前は知ってたのか?みんなが脱退すること」
「うん。プロデューサーから聞いてた」
KOHは淡々としたETSUの態度に苛立った。
「ああそっか。そうだな、プロデューサーはお前のこと気に入ってたもんな。自分は続けられるからってあたし達のこと見下してたんだろ?」
「…どうしてそんなこと言うの?」
「だってそうだろ?あたし達他のメンバーはお前の引き立て役になり下がって、どこでもETSUばっかり持ち上げられて、優劣つけられて、こっちの気持ちも考えろよ」
あまりの言い分に、CUWが話って入り宥める。
「ちょっとKOH…それは違うよ、八つ当たりだよ」
惚けているのか、本当に伝わっていないのか、ETSUは不思議そうな顔をする。
そんな態度にKOHの怒りは爆発寸前だ。
「…?話が読めないんだけど。僕が何をしたの?」
「いい加減にしろよ…!自分は関係ありませんみたいなツラしやがってよ!」
「だってそうでしょ?僕はこのグループで一生懸命やってきた、それが認められて評価された。みんなも同じ気持ちで頑張ってると思ってた。
でもプロデューサーに聞いて蓋を開けてみたら"僕のせいでやる気がなくなった"って言ったそうじゃないか。DODを盛り上げようって気持ちでパフォーマンスしてたらこんなことにはなってないんじゃない?自分のやる気のなさを他人の所為にしないでよ」
「だからそれを!あたし達は!やったんだよ!やったのにどうしてお前だけ!」
KOHの怒りも虚しく、ETSUは簡単に切り捨てた。
「プロデューサーには響いてなかったんじゃない?」
「…!言わせておけば!」
KOHは感情に任せてETSUを強く押した。
ガラガラと大きな音を立てて、化粧品やお菓子が辺りに散らばった。
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