第110話 みずほとデート

 みずほと温水プールにやってきた。


「勝君、思いっきりバカンスしようね」


 スクール水着ではなく、露出の高いビキニを着用している。体の魅力で、男を落とそうとする作戦なのかな。都の映画館とは、異なる刺激があった。

 

 胸を露骨にみると、野蛮な男という印象を与える。嫌がられない程度に、彼女の体を見たほうがよさそうだ。


 視線を背けていると、みずほは頭を抱えていた。


「勝君に目を背けられたら、セクハラ視線だけになっちゃうよ。好きな人に見てもらわないと、ビキニにした意味は完全に失われる」


 見ろといわれたなら、堂々と見てやろうじゃないか。二つの目線を、みずほの胸にロックオンする。


「もっと間近で見られるよう、バストに頭をうずめてみようよ」


「そこまでは・・・・・・」

 

 みずほは露骨に拗ねた。


「こういうときはチャンスだと思って、おっぱいをもみもみするくらいの大胆さは必要だと思うんだけど・・・・・・。他の女と交際をスタートさせたら、永久的にできなくなるかもしれないんだよ」


 足を引っかけられる感覚があったと、プールの中でバランスを崩す。頭は胸の中にピンポイントで、ダイビングしてしまった。  

 

「勝くん、積極的でいいよ」


 体勢を立て直そうとするときに、おしり、腰などにも触れてしまった。


「まったく、油断も隙もないんだから・・・・・・」


「あの、その・・・・・・」


 みずほはくすっと笑った。


「私が足を引っかけたから、プールの中でバランスを崩したんでしょう。あまりに奥出だから、ちょっかいをかけたくなったの。危険なことをしてごめんなさい」


「みすほさん・・・・・・」


 みずほは大きな息を吐いた。


「千鶴といい雰囲気なのは聞いているよ。お互いにとって、居心地が良かったのかもしれないね」


「・・・・・・」


「最初で最後のチャンスになると思っているの。悔いを残さないために、温水プールをチョイスしたんだよ。本当に好きになった人に、少しでも触れてほしかった・・・・・・」


「みずほさん・・・・・・」


 みずほは手で涙をぬぐった。


「デート中に泣いたりしてごめんね。せっかくの雰囲気が台無しだよね・・・・・・」


「そんなこ・・・・・・」


「優しすぎると、いろいろな人に迷惑をかける。冷たくあたることも、生きるうえでは大切なことだよ」

 

 とうさんは切り捨てるものは切り捨て、守るべきものは守っている。メリハリをつけることで、苦しむ人を最小限に減らしている。


「私にとっては、思い出デートなんだ。今日を終えたら、すっぱりと忘れようと思っている」


「みずほさん・・・・・・」


「女の切り替える力は、光よりも早いんだよ。いい男性とおつきあいして、勝君をうんと後悔させてあげるんだから・・・・・・」


 そうなればいい。苦しんでいる彼女を見ていると、 そのように思うしかなかった。

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