第109話 みずほからデートの誘い

 バレンタインでたくさんのチョコレートをもらっていた、バスケットボール部のエースの周りに女は誰もいなかった。きゃあきゃあいっていたのは、幻だったかのように。


 女たちが離れていったのは、エースのある言葉が発端。機嫌をよくした男は、「女は体をもてあそぶ道具」、「俺様のために尽くすのは当たり前」、「俺様は女と自由に遊ぶ権利があるけど、女は一途が当たり前」といった、人間を人間と扱わない発言を行った。度を越えた発言に女たちはドン引きし、男から離れていった。


「女は体をもてあそぶ道具」だとしても、言葉にするのは絶対的タブー。漏らしてはいけない本音は、心の中でとどめておくべきだ。 


 勝の座っている席に、みずほがやってきた。


「勝君、デートをしてみようよ」


「みずほさん、どこに行くの」


 みずほは顔を赤らめる。


「温水プールがいいかな」


 都とは違った意味で、刺激的な一日になる予感がする。性欲に負けなければいいけど。

 

 みずほと温水プールに行くことに対して、クラスメイトから心ないヤジが飛ばされる。


「みずほさんとプールに行くなんてうらや、けしからん・・・・・・」


「そうだそうだ・・・・・・」


「俺たちもつれていけ・・・・・・」


 みずほは我慢ならなかったのか、ヤジを飛ばした男たちに近づいていく。負けん気の強さについては、一流の域に達している。


「嫉妬している暇があるなら、魅力的な男になりなさい。そうすれば、女の子に振り向いてもらえるようになるわ」


 クラスにいる女たちは同調した。


「そうだ、そうだ・・・・・・」


「嫉妬するなんて、恥ずかしい男たち」


「そんなんだから、誰からもモテないんだよ」


 みずほは要件を終えると、こちらに戻ってきた。


「温水プールに行こうよ」


「いいけど・・・・・・」 


 女の体もいいけど、肝心なのは中身である。その部分については、しっかりと頭においてほしい。

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