第74話 一途な性格が災い(都編)
授業を休み、保健室で横になっていた。
一途な性格でなければ、体調不良を避けられた。心の病気によって、体の調子を崩すのは情けない。
一人の男を好きになりすぎるのは、よくないことだと理解している。それにもかかわらず、勝に対する思いを止められずにいる。己の心の弱さに、辟易させられる。
交際をスタートさせたい男性は、若葉に二股をかけられ恋愛に消極的な姿勢を取っている。交際したいと伝えても、トラウマを思い出させるだけ。最初から難しいかじ取りを迫られている。
ライバルの多さも懸念材料。勝を好きな女の子は、同学年だけで4人以上。25パーセント未満の狭き門をかいくぐって、恋人になることはできるのか。
「都さん、体調はどうですか?」
先生を不安にさせないため、あたりさわりのない言葉を選ぶ。
「まずまずといったところですね」
保健室の先生は、体温計を手に持っていた。
「体温を確認するので、すぐに測定してちょうだい」
体調不良になると、体温を真っ先に測るようにいわれる。体調不良=高熱という
根拠のない社会常識が定着している。
「わかりました・・・・・・」
体温を測定すると、36.5℃と表示された。体調は悪くとも、高熱にはなっていなかった。
「熱もなさそうだし、大きな問題ないみたいね」
体温が正常=問題ないとみなす。こちらについても、間違った考えを常識とみなしている。
「2時間くらい外すから、ゆっくりとしておいてね」
ゆっくりとしておいてね=問題を絶対に起こさないでねというニュアンスを含んでいる。
「わかりました・・・・・・」
「眠っている子がいるから、静かに過ごすようにしてね」
「わかりました・・・・・・」
40くらいの保健の先生は、保健室からいなくなった。寂しさを感じた直後、勝の一生懸命になっていた顔を思い出した。あんなに必死になられたら、ますます惚れちゃうじゃないか。これ以上、私の心を揺さぶらないで・・・・・・。
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