第84話 旅に出よう(若葉編)
生活保護を受けたことで、満足な食事をとれるようになった。ただ、ぜいたく品は一切購入不可。贅沢をおぼえてしまった女には、到底満足できるものではなかった。
このままの生活を続けていても、窮屈な日々を強いられるだけ。人生をリセットするために、旅に出る決意をした。
旅に出るためには、十分な資金を必要とする。母の財布からありったけのお金を頂戴しておこう。
財布の中身は一万円札が三枚入っているだけ。金額の少なさに対して、大きなため息をつかざるを得なかった。ゼロをうしろに、1個、2個くらいはプラスしろ。
三万円ぽっちだとしても、お金がないよりは全然まし。母の財布の中から、三万円をもらうことにした。娘に迷惑をかけ続けたのだから、もらうのは当然の権利だ。
お金を財布に詰め込むと、家をあとにする。できることなら、二度と戻ってきたくはなかった。贅沢を禁止されている生活なんて、拷問を課されているに等しい。
家を出発する直前、母の困惑した声が聞こえた。
「財布に入れておいた三万円がないみたいなの。あれがなければ、今月の食事は米だけになっちゃうんだけど・・・・・・」
「私は知らないわ。かあさんがどこかにやってしまったんじゃないの?」
「若葉、持ち逃げなんてしていないよね」
怒気を強めた声で、母の問いに答える。
「そんなことするわけないでしょう」
「メンタルを安心するために、財布を確認したいんだけど・・・・・・」
財布を確認されたら、三万円を盗んだことがばれる。美穂にお金を確認される前に、家を出発する。美穂は異変を察知したのか、すぐにこちらを追いかけてきた。
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