第83話 地獄生活復活(若葉編)

 音楽を聴いていると、ドアをノックされる音がした。


「あんた。どうしてここに来たのよ?」


「正志さんと離婚したの。私は保護者だから、成人するまでは同じところで生活しようと思っているの」


 娘を飢死させようとした、母と同じ場所で生活する。想像するだけで、身の毛のよだつ展開だ。


「あたしは嫌なんだけど・・・・・・」


「そう。それなら、一人で全部をやってちょうだい。おかあさんは一円も援助しないからね」


 お金の話をして、娘を意のままに操ろうとする。美穂は世界で一番、最低な女である。


「来月からの生活費はどうなるの?」


「離婚したんだから、振り込んでもらえるわけないでしょう。お金は自分たちで、どうにかしていく必要がある」


 生活費を振り込むと約束したから、不憫なところに引っ越してきた。お金をもらえないなら、元のところで生活したい。


「私の生活はどうなるの?」


「生活保護を申請しているから、食生活はましになるはずだよ」


「生活保護って何?」


「必要最小限の生活を送るために、国からお金をもらえる制度だよ。詳しいことは自分で調べなさい」


 生活保護を受けながら、ぜいたく三昧の日常を送っていく。つらいことばかりだった人生に、かすかな光がともろうとしていた。


「ぜいたく品、ぜいたく品、ぜいたく品がほしい・・・・・・・」


 希望に満ち溢れていた心は、母の一言で叩き落されることとなった。


「生活保護を申請するにあたって、ぜいたく品の処分は必須なの。生活費で購入したブランド品は処分しないといけないの」


 ようやく入手できたブランド品、絶対に手放したくなかった。


「生活保護を受けながら、ぜいたく品を持ちたいよ」


「そんなことをしたら、生活保護を打ち切られるよ。ほしいものがあるなら、自分で働いて購入しなければならないよ」


「そんな・・・・・・」


「収入についても、一円単位で申請する必要がある。これを怠ったら、すぐに生活保護を切られる」


 お金だけくれて、自由も認めればいいのに。生活保護の窮屈さに、ため息を連発しまくった。

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