第82話 従姉の思いはうすうす感じていたけど
スーパーで買い物を終えて、自宅に戻ってきた。
卵は10個で98円。特売セールの値段とはいえ、こんなに安く購入できるのは驚きだ。
愛はノリノリな声を発する。声のトーンだけで、上機嫌なのが伝わってきた。
「勝ちゃん、卵を二人で割っていこうね」
失敗回数が多くなるほど、食材のロスは増えていく。食べ物を無駄にしないためにも、次こそは絶対に成功させる決意で臨もう。
「愛ちゃん、手本を見せてよ」
愛はどういうわけか、警察官の敬礼のポーズをとった。
「了解です」
愛は手馴れているのか、卵を簡単に割っていた。
「ポイントは力を入れすぎないことだよ。勝ちゃんもやってみようか・・・・・・」
「うん。わかった」
軽い深呼吸をしてから、卵を手に取った。平常心でやれば、必ず成功できるはずだ。
神経を研ぎ澄まそうとする直前、背中に柔らかい感触があった。
「愛ちゃん、体をくっつけすぎだ」
「これくらい近くしないと、レクチャーできないでしょう」
「手を握るのはともかくとして、背中にぴったりと体をくっつけるのはどうかと思うけど・・・・・・」
胸の柔らかさに意識を奪われ、卵を割るのに集中できる環境とはいいがたい。
「体を離せばいいんだね」
愛の寂しそうな表情を浮かべながら、体をゆっくりと離した。
「うすうす感じていたけど、従弟としてではなく異性として扱っているの」
愛は迷ったあと、はっきりとした意思を持って頷く。
「うん。勝ちゃんのことが大好きだよ」
従姉から大好きと伝えられ、頭は真っ白になった。
「勝ちゃんと二人で過ごしていたとき、これまでとは異なる感情が芽生えたの。心に問い合わせてみたら、恋愛感情そのものだった」
若葉さえいなければ、複雑な状況を避けられた。あいつはどこまで、他人に迷惑をかければすむんだ。
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