彼女を作るために(2章)

第96話 バレンタイン

 2月14日はバレンタイン。もてる男にとっては天国、もてない男にとっては地獄の一日を迎えている。


 バスケットボール部のエースの周りには、たくさんの女の子が集まっていた。イケメン、成績優秀、スポーツ万能、さわやかな笑顔。女をメロメロにするには、十分すぎる要素を持つ。

 

 クラス一のモテモテである一方、嫌っている女の子が多いのも特徴。彼に対する評価は大好き、大嫌いの真っ二つに割れている。


 女の子たちから嫌われる理由の一つに、プライドの高さがあげられる。エリート街道を突っ走ってきたため、自分は特別な存在であるという認識を持つ。


 二股をかけた女と、雰囲気はそっくりなところもマイナスポイント。道を一歩踏み間違えれば、奈落の底に叩き落ちていきそうだ。


 学校一のモテモテは、教師から目をつけられている。過激な行動をとった場合、厳しい処分を下される。


 教室に入った直後、一人の女性が近づいてくる。心の余裕のなさからか、そそくさとしていた。


「勝君、チョコレートを作ってみました。もらってくれると、とっても嬉しいんだけど・・・・・・」


 都の差し出したチョコレートは、ハート型。好きな男に対して、必死にアピールをしようとしている。


「僕がもらっていいの?」


 都は小さく頷いた。


「勝君のために作ってきたの。是非、受け取って・・・・・・」


「都ちゃん、ありがとう」


 チョコレートを受け取るとき、指と指が重なる。繊細さを感じさせる指は、ほっこりとする温かさを伴っていた。


「チョコレートを食べたら、感想を聞かせてね・・・・・・」


「わかった。約束する」


 都と入れ替わるように、千鶴がこちらにやってきた。 


「勝君、チョコレートだよ」


 チョコレートはハート型で、丁寧なラッピングを施している。今年のバレンタインチョコに、相当な気合を入れているのが伝わってくる。


「千鶴さん、ありがとう・・・・・・」


 去年までは一つももらえなかったチョコレート。高校生に上がって、恋愛運が上昇したのかなと思った。

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