第97話 4つのチョコレートをゲット&冬樹もチョコをもらう

 都、千鶴以外にも、二人の女の子からチョコレートをゲット。合計で4つももらえるとは、夢にも思っていなかった。


 義理チョコは一つもなく、すべてが本命チョコ。誰からもチョコをもらえなかった昨年からは、まったく考えられなかったシチュエーションだ。


 ノリノリになっている男のところに、元若葉信者がやってくる。


「おまえはチョコレートを4つももらえたのか。ひとつくらいは、おすそわけしてくれよ」


 冬樹の言葉からして、一つももらえなかったのは容易に想像がついた。


「おまえもいつかはもらえるようになるさ・・・・・・」


 励まそうとしたつもりだったけど、完全に逆効果だった。


「下手な慰めは、傷に塩を塗るだけだ。若葉信者をさらけ出した男に、チョコをくれるお人よしがいるわけないだろ」


 まとも人間になったとはいえ、過去の印象を払拭するのは難しい。高校卒業するまで、チョコをもらうのは絶望的だ。


 二人で話しているところに、松本優音が近づいてきた。つけまつげをしているところは、女の子らしさを感じさせる。


「冬樹君、これを受け取ってほしいんだけど・・・・・・」


 優音が差し出したのは、ハート型のチョコレート。本命チョコであることは、すぐに察しがついた。


「僕にチョコレートをくれるの?」


「うん。20時間かけて作ったから、残さずに食べるようにしてね」


 20時間の愛情(ある意味で怨念)のこもったチョコレート。適当にあしらってしまえば、痛い目を見るのは明らかだ。


「優音さん、ありがとう」


「冬樹君は見違えるように変わったね。私はすっごく素敵だと思っている」


 冬樹は素敵といわれ、耳たぶが赤く染まった。


「女性からいわれると、すっごく照れるね」

 

「若葉信者のころには戻らないでね。あんなのを見せられたら、不気味すぎて近づけないよ」


 神様扱いしていたころは、不気味を通り越していた。脳を完全に薬でやられてしまったかのようだ。


「優音さんのためにも、このままの性格であり続ける」

 

 優音は手をすりすりさせる。


「冬樹君、放課後にデートしてみようよ」

 

 冬樹は驚いたらしく、腰を抜かしてしまった。


「デ、デート?」


「うん。そうだよ」


「僕なんかでよければ、よろしくお願いします」


 優音は喜びが爆発したのか、冬樹の手を握っていた。冬樹はしどろもどろになりながらも、優音から受けた愛情の余韻に浸っていた。




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