第65話 冬樹と破局(若葉編)

 スマホに連絡が入った。誰なのかを確認すると、しもべからとなっていた。


「あんた、どうして電話に出なかったの。神様を一秒でも待たせたら、罰が当たるわよ」


「どんな罰が当たるのか、教えてもらいたいんだけど・・・・・・」


 声は同じだけど、トーンは前回までと明らかに違っている。神様と慕っていた、面影は完全消滅している。


「それは・・・・・・」


 電話口から乾いた声が聞こえる。


「若葉に伝えようと思うことがある。おまえとは近倫一切、かかわらないようにする」


 しもべからの言葉に、頭は一瞬真っ白になった。


「それってどういうこと・・・・・・」


 冬樹はゆっくりと息を吐きだす。


「わかりやすくいうなら、破局するということだ。おまえはそんなこともわからないのか」


 しもべの分際で、別れを切り出すなんて。破局したいといえる権利は、王様である女性のみに与えられる。


「しもべのくせに生意気だわ。私のことは神様と呼びなさい」


 冬樹はこれまでとは、明らかに異なる態度をとってきた。声は同じなのに、中身だけ入れ替わったみたいだ。


「神様、バッカじゃないの。おまえは神様ではなく、生きる価値のないクズ女だろ。誰からもまともに相手にされず、孤独死するのがお似合いだ」


 冬樹にいわれたことが許せず、感情的に反論する。


「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさいわよ。選ばれし人間である私が、孤独死なんてするわけないでしょう」


「新しい学校で、友達はできたのか。おまえみたいなクズは、誰からも逃げられているんだろ」


「そ、そ・・・・・・」


 新しい学校に通学するも、一日目から危険人物とみなされている。神様である女性に対する侮辱罪で訴えてもいいレベルに達している。


「お前との関係は終わりにする。連絡を入れられないよう、着信拒否設定にしておくから・・・・・・」


 電話を一方的に切られる。あまりのあっけなさは、人間の心変わりを感じさせるものだった。

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