第63話 お金の管理すらできない娘(美穂編)

 若葉がいなくなってから、勝は別人さながらの明るさを見せている。二股をした女のそばにいるだけで、莫大なストレスを抱えていた。


 新しいスマホに、ある人から電話がかかってきた。


「正志さん、どうかしたの?」


「美穂の娘から連絡を受けた。生活費として渡した10万円を、数日で使い切ったようだ。お金がなくなると、催促の電話をよこしてきた。お金=無限にわいてくるものという感覚で生きている」


 10万円を数日で使い切るなんて。逮捕された元夫と同じで、計画性は皆無である。


「あいつにお金の管理を任せたのは大失敗だった。来月からは家賃、光熱費、水道代、電気代などの諸経費については、こちらで払うようにする。仕送りには、10万円から5万円に削減する。振り込み方法についても、一週間ごとに行う。一度に振り込んだら、あっという間に使い切るからな」


 地雷要素満載の娘の面倒を、なんとかみようとしている。正志にはありがたい思いでいっぱいだった。


「いろいろとお手数をかけてすみません」


 正志は話をする前に、オホンと籍をする。


「君には申し訳ないが、今月分については追加しない方針だ。保険金を受け取る計画を立てていた娘を助けたいというなら、通帳の番号を伝えてもいいけど・・・・・・」


 お金を仕送りすれば、あの子の父と同じ道を歩む。若葉の将来のためにも、お金を送るのはやめたほうがいい。


「あの子にはアルバイトをするようにいってください。それを拒否するのなら、高校を退学させてもかまいません」


「わかった。次に連絡があったときは、君の話をそのまま伝えておく」


 本性を知れば知るほど、クズっぷりが浮き彫りになる娘。どのようにすれば、まっとうな人生を歩ませることができるのか。どんなに案を巡らせても、良い答えは見つかりそうになかった。

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