第70話 従姉が家にやってきた

 食器洗いをしているときに、玄関のチャイムが鳴らされた。


「私が代わりに食器洗いをするから、勝さんは来客対応をお願いするね」


「わかりました・・・・・・」


 敬語で話しているうちは、本物の家族からは程遠い状態といえる。ため口で話せるように、距離を詰められるといいな。


 玄関の鍵を開けると、思わぬ人物が立っていた。


「勝ちゃん、こんにちは・・・・・・」


 髪をしっかりとくくって、服装もワンランク上のものを着用。デートをするために、気合を入れていると察しがついた。


「愛ちゃん、彼氏とのデートがあるんじゃないの?」


「相手の都合がつかなくなって、お預けになってしまったの。やることもなくなったから、こちらの家を訪ねることにしたんだよ」


 愛がこちらの家を訪ねるのは、おおよそ12年ぶり。カノジョが小学生のときまでさかのぼる。


「せっかくきたんだから、ゆっくりと過ごしていってよ」


「勝ちゃん、ありがとう」


 愛は靴を乱雑に脱ぎ捨てたあと、家の中に入ってくる。こちらについては、12年前と変化はなかった。


 愛は室内をゆっくりと観察した。


「12年前とそんなに変わっていないね」


「そうかもしれないな・・・・・・」


 変わった部分といえば、かあさんのものが減ったこと。あの世に旅立った女性のものは、ほとんどが処分された。


 愛は家の中に入ると、新しいかあさんのところに向かっていく。美穂は気づいたのか、食器洗いを一時的にストップする。


「正志さんの再婚相手で、美穂といいます。よろしくお願いします」


「愛といいます。よろしくお願いします」


 美穂は母親で、愛は娘。二人の会話を見ていると、そのように見えなくもなかった。


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