第50話 クラスからさらに厄介者扱いされた(若葉編)

 父親が逮捕されても、通学する義務はそのまま。気乗りは一ミリもしなくとも、登校をすることにした。無断欠席しようものなら、母からねちねちと説教されるのは確実。 


 教室に足を踏み入れた途端、静かだった室内はざわざわとし始める。犯罪者の娘に対して、明らかな警戒心を抱いているのが読み取れるほどに。


 詐欺行為を行ったのは父であって、私は何も悪いことなんてしていない。犯罪者まがいの目を向けるのはやめるべきだ。すぐにやめないなら、人権侵害で訴えてやるんだから。


 クラスメイトから冷たい視線を浴びせられる中、ある男がこちらにやってきた。


「若葉、おはよう・・・・・・」


 冬樹の声を聞き、元々から低すぎるテンションはダダ下がり。同時に頭がかち割れそうなほどの頭痛に見舞われた。


 空気を読めない無神経は、絶対に触れてほしくないところに当たり前のように触れてきた。


「おとうさんが逮捕されたからといって、おまえとは無関係だ。これまでどおりに、ふてぶてしく生きていけばいい」


 冬樹のあまりの傍若無人ぶりは、日本語を一瞬忘れるほどのひどさ。どのような教育を受けたら、口ハラ(口を開くだけでハラスメント)人間になれるのか。

 

 何のとりえもない男は、さらにデリケートな部分に突っ込んできた。


「お前が世界一の嫌われ者だとしても、俺だけは仲間で居続けるから。困ったことがあれば、何でも相談してこいよ。女王様のためなら、どんなことだってやらせていただきます」


 おまえがかかわってくるから、クラスメイトからさらに嫌わているんだ。こちらに夢中になっている男は、そのことに気づいていなかった。


 あと、世界一の嫌われ者はおまえだ。学校内で行われた、「絶対に彼氏にしたくないランキング」で不動の一位を獲得した。女子からの得票率は90パーセント以上の圧倒的な嫌われぶり。世界で男が一人しかいなくても、こいつだけは彼氏にしないという女たちの言葉が聞こえてくるかのようだ。


 こいつのすごいところは、どんなに嫌われてもいいと割り切れるところ。大量破壊兵器をぶちこんだとしても、こいつのメンタルは壊れることはなさそう。


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