第49話 元夫が逮捕(美穂編)
旦那は警察に捕まり、牢獄いきとなった。
面倒に巻き込まれる前に、離婚したのは大正解。婚姻生活を続けていれば、さらなる地獄が待っていた。
若葉は入院してから、一度も見舞いにきていなかった。非常識な娘であることは知っていたけど、ここまでとは思っていなかった。正志が追い出そうとするのも、やむを得ない判断といえる。
美穂の名前の書かれた病室に、勝がやってきた。血のつながっていなくても、献身的に介護してくれる優しい男。若葉はどうして、この人を捨てたのか。
「おかあさん、容態はどうですか?」
元旦那が逮捕されたこともあり、本日は特によくなかった。呼吸をするごとに、息苦しさを感じる。
「今日はすっごく調子悪いかな」
「お体を大切にしてくださいね」
離婚した夫、娘からは一度も聞かなかった優しい言葉。知らず知らずのうちに、目頭が熱くなっていくのを感じた。
「ありがとう・・・・・・」
「おかあさん、何か食べられるものはありますか?」
炭水化物系はだめだとしても、デザート系なら食べられる。考えをまとめてから、買ってきてもらうものをお願いする。
「ヨーグルトをお願いします」
「わかりました。すぐに買ってきます」
勝は丁寧にお礼をしたあと、病室をあとにする。冷たい血の流れている父親から、このようなできた息子が育ったのは奇跡。あの子のなくなったお母さんは、よっぽどしっかりとしていたのかな。ぶり返してはいけないとわかっていても、一度は聞いてみたい。
テレビをつけると、夫の詐欺事件の詳細を報道されている。自分と一緒に生活していた人が、容疑者になるのは複雑な心境だった。
若葉もあんなふうになるのか。最低最悪な娘だけに、刑務所送りにならないとはいい切れなかった。赤の他人は捕まってもいいから、娘だけは犯罪者になってほしくない。
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