第59話 自己肯定感アップ(若葉編)
冬樹はうっとうしい男だけど、一つだけいいところがある。ありとあらゆる賛辞で、若葉の心をおおいに満たしてくれる。
自尊心を満たすために、忠実なるしもべに連絡をかける。スマホに張り付いているのか、ワンコール以内に電話に出た。
「神様、ご用件は何でしょうか」
「忠実なるしもべよ、神様の心を満たしなさい」
忠実なるしもべはすぐさま、心を満たす言葉を発する。
「神様は世界一でございます。女王様よりも優れた人間は、世界に一人も存在しません」
「どこが世界一なのかをいってみろ」
冬樹は準備していたのか、すぐに長所をあげてきた。
「一つ目は性格でございます。神様と呼ばれるほどの、人格者でございます」
神様と呼ばれるほどの人格者、若葉のためにあるような表現方法だ。
「忠実なるしもべよ、他にいいところをあげてみよ」
「顔立ちも素敵でございます。全世界の中で、ダントツの一位でございます」
「しもべよ、よくいった。ほめてつかわすぞ」
「神様、ありがたきお言葉でございます。しもべとして、大変うれしゅうございます」
しもべと話をしていると、母からラインを受け取った。せっかくの気分を台無しにするなんて、母親失格といえる。
「しもべ、くだらぬ用事が入った。今回の電話はここまでにしておこう」
「神様、失礼いたします」
冬樹とのやり取りを終えたあと、母からの電話に出た。
「かあさん、どうしたの?」
こいつの無力によって、家から追い出されることとなった。今回の件については、絶対に許すつもりはない。
「若葉、しっかりと生活しているかい?」
「あんたには関係ないでしょう。二度とかけてくるな」
電話を一方的に切ったあと、着信拒否設定に変更。あいつの声を聞くだけで、人生はどんどん不幸になりさがる。今すぐ死ぬことだけが、娘に対する唯一の償いであるといえよう。
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