第41話 従姉の家に再びやってきた

 家の中に入った瞬間、大量のクラッカーで祝福される。


「勝ちゃん、いらっしゃい」

 

 愛は満面の笑みで、勝を出迎えてくれた。必要とされているのが伝わってきて、心にゆとりができた。


「愛さん、お世話になります」


 若葉さえやってこなければ、従姉に迷惑をかけずにすんだ。あいつは存在していること自体、他人の害となりうる。


「勝ちゃんのために、ご馳走を作ったんだよ。おなかいっぱいになるまで。食べていいからね」


 テーブルにはたくさんの料理。時間をかけたのが、はっきりと伝わってくる。

 

「愛さん、そこまでしなくても・・・・・・」


「勝ちゃんにおなかいっぱい、おいしいものを食べてほしいの。勝ちゃんの喜ぶところを見られたら、一日の疲れはすべて飛んじゃうよ」


「愛ちゃん・・・・・・」


「勝ちゃん、一つの布団で眠ろうね」


 従姉としての距離感ではなく、恋人さながらに思えてならなかった。愛の本音はどうなっているのか。


「愛さん、そこまでは・・・・・・」


「昔は甘えん坊だったのに・・・・・・・。高校生ともなると、いろいろと変わってしまうんだね」


「そりゃそうだ。女の体にむやみに触るわけにもいかないし・・・・・・」


 セクハラ=人生のレッドカード。慎重に慎重を期す必要がある。


「勝ちゃん、彼女はできたの?」


「今はできていないけど・・・・・・」


 告白はされたけど、前に進めなかった。浮気女のトラウマは、強烈に焼き付いてしまっている。

 

「私は彼氏を絶賛募集中だよ。勝ちゃん、立候補するのはどう?」


 いとこ同士の交際は、一ミリも考えたことはなかった。 


「誰とも付き合いと思わないんだ・・・・・・」 


 愛さんは次の彼氏を探さないの、という言葉が浮かぶも聞くことはできなかった。 


「料理が冷めるから、ご飯を食べよっか」


「愛さん、ありがとうございます・・・・・・・」


 料理を食べて元気を出せるはず。後ろ向きな思考にとらわれていた男は、前向き思考に転換した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る