第40話 ぼっち生活(若葉編)

「勝、どこかに行くの」


 勝に声をかけても、こちらを振り返らなかった。


「おかあさんが戻ってくるまで、親戚の家でお世話になることにした。おまえと二人きりなんて、絶対に無理だから」


 二人きりの空間で新しい愛を育んでいく。こちらの思惑は完全に粉砕されることとなった。


「私は一人でどうすればいいの?」


 勝は冷たく言い放つ。


「一人で生活すればいいだろ。家を追い出されるまでは、住む権利はあるんだから」


 勝は視線を合わせないまま、話を続けてきた。


「おまえが出ていくなら、ここにいるけど。身寄りもない女には、そんなことはできないだろ」


「そ、そうだけど・・・・・・」


 頼れるような存在は、すぐそばにはいない。家から出ていけば、ホームレス生活を余儀なくされる。


「すべての状況を照らし合わせて、ベターだと思える選択をとっている。文句があるなら、家から出て行ってくれていいぞ」


 納得はしていないけど、認めるしかなかった。路頭で誰かに襲われるのは絶対に嫌だ。


「わ、わかったわよ」


「今回は話が通じたみたいだ。おかあさんが戻るまで、従姉の家で生活してくる」


 勝は荷物を抱えて、家を出ていく。二人きりで生活する夢は、儚く散ることとなった。


 一人ぼっちになって数分後、母から連絡を受け取った。


「勝ちゃんとはどうしているの?」


 勝は従姉の家で生活することを、おかあさんには伏せている。そのことを悟ると、とっさに嘘をついた。


「なんとかやっているよ・・・・・・」


「勝ちゃんにはなるべく近づかないようにしてね。そうしなければ、すべてが終わると思っていいよ」


「わ、わかったわよ」


「あんたは我慢のきかない性格だから、すぐに近づいていくでしょうね。相手のことなんて、これっぽっちも考えないもの」


 勝は荷物をまとめて、家からいなくなってしまった。接する機会を完全に失っている。

 

「一週間くらいで、そちらに戻れると思う。それまでは大人しくしておいてね」


 おかあさんの電話は切れた。ツーツーツーという音がむなしく、部屋に響き渡っていた。


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