第39話 おかあさんが離婚しなければ(若葉編)

 おかあさんが離婚してから、生活は一気に苦しくなった。


 最初に削られたのはおこづかい。一カ月10000円から500円まで減らされる。20分の1になったことで、買いたいものをまったく買えなくなった。


 スマホの契約も、最低料金のものに変更。従来は使えていた機能の大半は、使えなくなってしまった。


 家庭の食事も貧相になった。肉はめったに食べられず、たまに食べられても半額もしくは外国産。野菜中心の食生活が続くことに、不満をおぼえる日々が続いた。


 水道の出しっぱなし、電気のつけっぱなし、お風呂でお湯をこぼすなどといったことにも、厳しいメスを入れられた。おかあさんのいいつけを破ったら、いろいろな罰則を科せられる。


 他にもいろいろなところに、制約をつけられた。離婚することは、生活のすべてを失うことを理解させられた。


 離婚につながったのは、おかあさんの心の狭さによるもの。人間はだれしも、一度や二度くらいは過ちを犯す。浮気を許していれば、一定水準の生活を維持できた。はなればなれになるという選択をした、おかあさんを一生恨み続ける。


 おかあさんがあの世に逝けば、高校卒業までは面倒を見てもらえるはず。重大な医療ミスによって、還らぬ女になってしまえ。死ぬことだけが、娘を地獄のどん底に叩き落したことに対するせめてもの償いだ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る