第32話 男の理性VS男の本能

「勝ちゃん、お風呂はよかったね」


 最後まで断ろうとするも、愛の圧力の前では無力。彼女にいわれるがままに、二人でお風呂に入ってしまった。


「勝ちゃんは遠慮しすぎだよ。女の子とお風呂に入るチャンスはめったにないんだから・・・・・・・」


「そ、そうかもしれないけど・・・・・・」


「男として生きているからには、一度くらいは女の子のおっぱいに触ってみたいでしょう。私でよければ、願いをいくらでも叶えてあげるよ」


 距離感は近かったけど、性の話はほとんどなかった。本日の従姉は別人と入れ替わったみたいである。


「愛ちゃん、今日はおかしいよ」


「そうかな」


 自覚症状もないのか。メンタルは相当やられているとみなしていい。


「愛ちゃん、つらいことがあったの?」


 愛は息を大きく吐いた。


「元カレにしつこくされて、いろいろと疲れているのかな。傷を中和してもらいたくて、やりすぎてしまったみたいだね。独りよがりなことをしてごめんなさい」


「愛ちゃん・・・・・・」


 愛は何を思ったのか、体をぎゅっと寄せてくる。


「勝ちゃんのことは、小学生時代から信用しているよ。性欲に走ったとしても、すっごく大切にしてくれると思う」


「そ、そこまでできた人間じゃないよ」


 些細なミスをしては、迷惑をかけることも多かった。笑って許してくれていたけど、本当は憎悪で包まれていたと思われる。


「中学一年生にあがったばかりのとき、40度の熱を出したよね。優しく看病してくれる姿に、胸を打たれたもの・・・・・・」


 愛は中学一年まで体が弱く、40度の発熱も珍しくなかった。両親は家にいないことも多く、代わりに看病させられた。


「熱を出さなくなったのはいいけど、看病を受けられないのは寂しいよ。私のために必死になってくれるところ、最高にかっこよかった」


「愛ちゃん・・・・・・」


「大嫌いな女と過ごしているんでしょう。できそこないといるよりも、私と一緒に生活しようよ」


 愛の瞳を見つめる。本気なのか、でまかせをいっているのかは、判断できかねる。


「勝ちゃん、夕食を作るね」


「お、お願いします・・・・・・」


「裸エプロンで作ろうかしら?」


 ノリノリになっている従姉を制した。


「普段着で作ってください」


「残念・・・・・・」


「宿題を終わらせてくるので、部屋を30分ほど借ります」


 まずいことがあるのか、愛はストップをかけてきた。


「部屋を散らかしているから、ここで勉強をしてちょうだい」


「わかった・・・・・・」


 従姉は何を思ったのか、もう一度ハグをしてきた。


「勝ちゃん、大好きだよ・・・・・・」


「愛ちゃん・・・・・・」


 従姉として? 異性として? 聞きたいと思うも、確認はしなかった。知ってしまったら、すべてが壊れてしまうように思えた。

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