第33話 別居の話をもちかけられる(若葉編)

 おかあさんから、勝は外泊をすると聞かされた。詳細は黙っているため、理由についてはわからなかった。


 好きな人がいないとわかったことで、日常はとってもつまらないものとなった。たった一人の存在の重要性を、改めて再認識する。


 2024年に大ヒットした音楽を聴いていると、おかあさんが部屋に入ってきた。


「勝さんのメンタルはもう限界だよ。すぐに家を出ていったほうがよさそうだね」

 

 同居生活を始めて、わずか10日。若葉の夢見る生活は、終わりを告げようとしていた。地上に出てきたセミと同じ程度の同居生活だった。

 

「うん・・・・・・・」


 おかあさんは眉間に皺を寄せる。


「あんたの軽はずみな行動のせいで、人生はぐちゃぐちゃだよ」


 一度の浮気に人生をここまで左右されるとは。得られるものはわずかで、失うものは∞だ。


「家を探しているんだけど、近いところはすべて埋まっているみたいなの。引越しを終えたあとは別の学校に通うことを理解してね」


 引越しをすれば、大好きな人と顔を合わせる権利を失う。


「部屋も極端に狭くなるかもしれない。そのことを頭に覚え込ませておいてね」


「う、うん・・・・・・」


「事前にしっかり調べて置いたら、こんなことにはならなかったわ。親として恥ずかしい限りだよ」


 子供をしっかりとチェックされていたら、接近禁止令を出されていた。結婚する、結婚しないのどちらであっても、暗い未来になるのは確定していた。

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