第34話 おかあさんが倒れる(若葉編)
引越しのために、身支度を終えておく必要がある。必要最小限の荷物を残して、残りは段ボールに詰め込んでいく。
大好きな人のパンツを箱に詰めた直後、想い人が自宅に戻ってくる。
「若葉、何をしているんだ」
「別居のための準備だよ」
パンツはどんなことがあっても、新しい家に持っていく。不自由な生活を余儀なくされる女の、唯一の娯楽である。
「そうか。新しいところでも頑張りな」
ちょっとくらいは引き留めてほしい、こちらの願いは届きそうになかった。
「新しいところではおかあさんを大切にしてやれよ。あんなにやつれていたら、いつかは倒れるかもしれないぞ」
「おかあさんは元気・・・・・・」
勝は大きな溜息をついた。
「思いやりがないからこそ、他人の苦しみに気づけないんだ。新しいところに引っ越したら、優しさを身につけろよ」
勝は何かに気づいたのか、あるところにかけつけていた。
「おかあさん、どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ・・・・・・」
勝は優しい手つきで、おかあさんの背中を撫でている。
「体はもう限界です。少しくらいは休んでください」
「そんなことはわかっているけど、生活のために働き続けないといけないの。そのことだけはわかってちょうだい」
「そうだとしても・・・・・・」
おかあさんは咳をしたあと、地面に倒れる。勝は緊急を察したのか、すぐに救急車を呼んでいた。
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