第12話 作り直し

 殺人レベルの雑炊は食べさせるのはさすがに無理。やる気は0.0000001ミリも起きなくとも、新しいものを作り直す必要に迫られた。


 炊飯器を確認すると、ご飯はお茶碗1杯分だけ残っている。もう一度だけ作り直せるのは、こちらに対する嫌味なのか。すっからかんの状態なら、ドラッグストア、コンビニ、スーパーなどで代用してやりたいところ。味覚に鋭い方ではなさそうなので、90パーセント以上はごまかせるはず。見破られたとしても、適当な理由をつけてやればいい。


 二股女は塩分を0にしろといっていた。あいつのお望みどおり、水、米だけの雑炊を完成させることにした。無味というのは、味の利き過ぎている料理よりも食べるのはきついはず。味のない雑炊を食べて、苦しみを感じやがれ。


 お湯を電気のガスで沸かす。水分量については、一度目と全く同じ量とする。


 水がお湯に変化したところで、茶碗一杯分の白米を鍋に入れる。火を軽く通せば、塩分0の健康雑炊完成だ。


 若葉と接したことで、たくさんのイライラを感じる。ストレス解消のために、冷蔵庫に入れてあるアイスクリームを食べることにした。元々自分用なので、あいつから抗議されることはないはずだ。


 電気のガスを消したあと、アイスクリームを食べる。口の中で溶けるごとに、ストレスもわずかながらに溶けていくようだった。


 引き出しの中から、プラスチックのスプーンを取り出す。病人の菌をまき散らさないためには、使い捨てタイプにしたほうが無難。


 雑炊を器に盛りつけたあと、40度の高熱を出した女のところに向かう。顔を合わせるという事実は、アイスクリームで癒したストレスを再発させるのに、十分すぎるほどの威力を持っていた。


 あいつのことを考えていたからか、階段で足を滑らせそうになった。かろうじて回避したあと、雑炊はこぼれていないのを確認する。あんなことがあっても、ご飯は一粒もこぼれていなかった。普段はこぼすのに、こういうときだけは無事なのは、一種の嫌味に思えてならなかった。

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