第6話 まったく眠れず、40度の高熱を出した(若葉編)

 大好きな異性と一つ屋根の下で眠れる。いつとは比べ物にならないほど、胸に高鳴りを感じていた。


 部屋を消灯するも、眠気はまったく感じなかった。魔法使いから覚醒魔法をかけられたみたいである。魔法使いさん、眠れない魔法ではなく、眠れるための魔法をかけてちょうだい。


 深夜の1時になった。眠れない魔法は、解ける気配はまるでなかった。


 頭の中は、勝のことで埋め尽くされていた。同じ屋根の下で過ごすことで、好きの気持ちは爆発寸前。


 脳内をリセットしなければ、睡眠を取るのは難しい。電気をつけてから、呼吸を整える。スーハー、スーハー、スーハー、スーハー。


 深呼吸をしたあと、横になった。目が冴えているのか、眠れそうな予感はまったくなかった。

 

 深夜の3時を回る。眠れない魔法の威力は、さらに強まりを見せる。お願いだから、寝かせてくれ。


 深夜の5時になった。眠気はかろうじてあるものの、眠るまでには程遠いレベル。若葉は一睡もできないことを、この時点で悟った。


 朝の7時を迎える。一睡すらしておらず、体は異様に重かった。


 布団から立ち上がろうとするも、鉛につながれたかのように動かなかった。こんなに重く感じたのは、人生の中で初めて。一睡もしていないことで、体調はすこぶる悪化した。


 体温を測ると、40℃と表示されていた。新しい家に引っ越してから、一日とたたないうちに高熱を出してしまうとは。新しい住人に、さらなる迷惑をかけることとなった。

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